2022年5月15日 06:00
男たちは妻や幼い我が子を手にかけ…沖縄を襲った集団自決の真実
滴り落ちた血が、地面に置かれたバケツにみるみるたまっていくのが見えたという。
「日ごろ、大人は残酷なシーンを子どもの目に触れさせないようにしていたので、私はドキドキしながら隠れて見ていました。すると突然、背後から祖母に声をかけられたんです。咄嗟に『おばあに叱られる!』と思い、身をすくめました。でも次の瞬間、祖母は私を叱ることなく、冷たい目で祖父を見ながら言ったんです。『この人は、おじいは首切り専門だから』と」
恐ろしい言葉もさることながら、顔を上げた祖父の、いまにも泣きだしそうな、見たこともない悲しげな表情に、幼かった宮城さんは身が震える思いだった。
「あのときの祖母の声、それに祖父のあの顔……、何十年もたったいまも、忘れることができません。その後も祖母は、同じように祖父をなじり続けました。
でも、それに対して祖父は一切、反論しないんです。あの日と同じように、悲しげな顔をするだけなんです」
■米軍上陸時、島民はパニックに陥りながら死に突き進んだ
高校を卒業した宮城さんは、沖縄国際大学に進学。大学の授業で、家族の戦争体験についてレポートを書くという課題が出され、初めて、ふるさとの島の集団自決に、正面から向き合うことになった。