2022年5月22日 06:00
『ふたりの人を愛し…』歌人・永田和宏語る故・河野裕子さんとの青春
淳さんは01年に歌集出版社の「青磁社」を立ち上げ今日に至る、三男一女の父である。
長女・紅さんは01年に母と同じ現代歌人協会賞を受賞(親子で初)した一方、父と同じ細胞生物学を研究し、現在は京大特任助教だ。8歳の長女の母である彼女が、母在りし日の永田家を語る。
「決して教育ママではなく、自分の興味、楽しみに兄と私を巻き込む母でした。父はそんな母に“褒められて育った”感じですね。父が出すアイデアに『それって面白い!』とすぐ呼応する。話し好きで、父が向かうところトイレまでついて行き、外から話しかけている……そんな母でした」
大人になって両親の晩酌に参入すると、それはにぎやかだった。
「夜遅くまでそれぞれ選歌したり、詠んだりで、夜中にリビングに集まってきて酒盛りが始まる。
ワイン片手に話す父を私たちが囲み、父が酔ったころに母も飲み始めて」
“歌壇のサザエさん一家”といわれるほど筒抜けで仲むつまじい家族。
だがそこから、裕子さんひとり、病魔に引っぱられてしまう。
《左脇の大きなしこりは何ならむ二つ三つあり卵大なり》(『日付のある歌』より)
00年9月、彼女に下った診断は乳がん、リンパ節に転移あり。