2022年5月22日 06:00
『ふたりの人を愛し…』歌人・永田和宏語る故・河野裕子さんとの青春
歌を通じてわかり合い、より結びつきを強くした夫婦にも、永別のときは迫りくる。08年7月に再発・転移がわかると、裕子さんは次第に弱っていった。しかしそこから2年あまり、亡くなる2日前まで詠み続けた。
《長生きして欲しいと誰彼数へつつつひにはあなたひとりを数ふ》(『蝉声』より)
永田さんが声を湿らせる。
「この一首は僕が口述筆記しました。河野の『あなたにだけは長く生きてほしい』という最後の願いが、僕のお守りとなりました」
長男と長女は、こう伝えられた。
「お父さんを頼みましたよ。お父さんはさびしい人なのだから、ひとりにしてはいけませんよ……」 そして次の歌が辞世の一首に。
《手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が》(『蝉声』より)
10年8月12日、裕子さんは64年の生涯に幕を下ろしたーー。
(取材・文:鈴木利宗)
【後編】75歳、人生の繁忙期歌人・永田和宏「天の妻はきっと褒めてくれる」へ続く
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