2023年1月29日 06:00
末期がんや難病の患者に希望を与えるトラベルドクター・伊藤玲哉さんの挑戦!
いま自分ができることは、1秒でも長く生きるための管を(体に)入れることだけではなく、こういう人の願いをかなえることじゃないかって考えるようになったんですね。でも、医療関係者に相談しても『何かあったら危ないから』と言われ、旅行会社に片っ端から問い合わせても、丁重に断られ続けた」
そうこうしているうちに彼は亡くなってしまった。研修医1年目の25歳の秋口のことである。
「温泉に行きたいという彼の願いを知っていながら、かなえられずにすごく悔しくて」
怒りにも似た悔恨を胸に、黄昏の鴨川沿いを歩いていたときだ。天啓のように閃いたという。
「病気であってもその人らしく生きる。そのための選択肢の一つが旅行だ。医療と旅行を結びつければいい。
病院や在宅で医療を行う医師はたくさんいる。医師である自分は、旅行をかなえるスペシャリストになればいい。錯綜していた思いがカチッとハマった感じでした。いまの医療には自分のやりたいことがない。だったら作るぞという反骨精神もあったかもしれません」
もともと伊藤さん自身が旅行好きだった。学生時代は一人旅で47都道府県を制覇し、中国やアメリカ、ブラジルにも旅をした。