2023年3月5日 06:00
入居者も介護者もひとつの家族“理想的なついのすみか”「ぽらりす」
そして2004年。あるビルのオーナーが岡田さんに泣きついた。聞けば、借り主の介護業者が、そのビルに3人の高齢者を置き去りにして、逃げてしまったという。
「『同じビルで介護施設を引き継いで、やってくれないか』って頼み込まれて。いやぁ、迷った。私にはまだ、勉強が足りないとも思ったし。いや、でも困ってるわけだよ、3人のお年寄りが。困ってる人を前にして、ぶん投げることできないんだ、私の性格は。
それで、独立するのはいまなんかな、とプラス思考でいくことにした」
こうして、思いも寄らぬ形で、岡田さんの「ぽらりす」は船出の時を迎えたのだった。
■関わり合いになりたくないと思っていた根性悪のタミちゃんは入居後、神様のようになって逝った
岡田さんの朝は早い。
「その日によってだけど、だいたい4時過ぎにいったん起きて、皆の部屋を見て回って……」
そこから、怒濤の一日が始まる。食事の用意に介助、酸素飽和度や血圧の測定といった入居者の健康管理、1人1日、少なくとも6回のオムツ交換。いちばん遅いオムツ交換は深夜1時半過ぎだ。スタッフのなかで、もっとも忙しく動き回っているのは、紛れもなく、岡田さんだ。開業以来、彼女が休んだのは数年前、インフルエンザに罹患して隔離された5日間だけ。