2023年6月17日 12:20
岡田茉莉子、90歳 最高のパートナーを失っていま「あなた、もっと強い女になるわよ」
『何事も10年やってみなければわからないわ』という母の励ましに前を向くしかなかった」
そうした雑音も次第にかき消されていく。撮影所では原節子や高峰三枝子といった伝説の女優と寝食を共にし、月1本のペースで出演するようになる。まさに日本映画の黄金時代。悩む暇もない忙しさであった。
「10年はがんばってみよう」と思えた原動力として、「母親を表札のある家に住まわせたい」という目標があった。これは23歳でかなえた。
「ずっと居候生活でしたから、誰からもお金を借りずに目黒区八雲に和風建築の一軒家を購入したとき、(本名の)『田中』『岡田』と表札を並べて門に掲げました」
このころ岡田さんは、派手な顔立ちからか、『芸者小夏』の温泉芸者や『思春期』のアプレゲール娘のインパクトが根強く、奔放で気の強い女の役ばかりが与えられる。その一辺倒のイメージから脱却すべくわずか22歳の女優がある日、ひとりで撮影所長室をノックして直談判した。
「私は自分のイメージをガラッと覆す作品に出演したいーー」
このときの交渉は成功したものの、その後、岡田さんは24歳で松竹へ移籍。デビュー以来100本の映画に主演したころ、運命の出会いが迫っていた。