2023年9月27日 11:00
蛭子さん“最後の展覧会”制作現場の挨拶は「毎回『初めまして』」
それだけで、わたしは蛭子さんの最後の展覧会を手伝ったことに満足した。
■認知症を公表後、仕事は激減。見かねた旧友たちが“最後の展覧会”を計画
わたしは、本誌で連載していた「蛭子能収の人生相談」の担当記者。月1回、蛭子さんに話を聞いては記事にまとめていた。
蛭子さんとの最初の出会いは20年前。先妻に先立たれ、孤独に耐えられないと語っていた蛭子さんに「誌上お見合い」の企画を持ち掛けたのがきっかけ。蛭子さんはそのお見合いで今の妻である悠加さん(57)と巡り合った。初デートを演出したわたしは“愛のキューピッド”気取りだったが、その後、連載の打ち合わせで蛭子さんと会ったときには、わたしのことをすっかり忘れていた。
連載の人生相談は蛭子さんの“ゆるくて鈍い”回答がさえた。
たとえば、心通わせる愛猫を失ったあとのペットロスが怖い、という読者に、蛭子さんは、自ら猫を飼っていたことを明かしながらも、
「動物と人は、気持ちが通じ合いません。通じると思っているのは人間の思い込みですよ」
と、バッサリ切りつつ、死んだ猫の墓参りには毎年行っていることを付け加えた。
蛭子さんは、’14年に認知症の一歩手前である「軽度認知障害」