目や耳が不自由な人でも誰でも一緒に楽しめる「日本で唯一のユニバーサルシアター」をつくった女性
2月最後の木曜日の正午過ぎ。上映後のトークショーやサイン会を仕切っていたかと思えば、受付に立ってモギリをやり、さらには映写室に駆け込んで次回の準備をするなど忙しく立ち働いていたのが平塚千穂子さん(51)。このシネマ・チュプキの代表で、創設者でもある。
「特にコロナ後は、うちのようなミニシアターこそ作り手と映画ファンをつなぐ橋渡しができるのではと、舞台挨拶やサイン会などのイベントを増やしています」
ふと、館内を出入りする観客のなかに、一般客に交じって、盲導犬を連れていたり白杖を持った視覚障害者が多いことに気付く。
ここの特徴は、すべての上映作品に音声ガイドや字幕などのバリアフリー環境を整えていること。目や耳の不自由な人も、車いすの人も、赤ちゃん連れのママも、お疲れ気味のOLやサラリーマンも、誰もが一緒に映画を楽しめる、日本初にして唯一の「ユニバーサルシアター」だ。
平塚さんが、文字どおり、紆余曲折を経てシネマ・チュプキをオープンさせたのが8年前。「小さいながら常設館のよさで、単に観たい映画があって来たお客さんが、盲導犬が館内に一緒にいる光景に驚く場面があったりもします。
その出会いで何かを感じてもらえたら、素直にうれしい」