目や耳が不自由な人でも誰でも一緒に楽しめる「日本で唯一のユニバーサルシアター」を誕生させた女性
(撮影:五十川満)
映画館がある。そこは日本初にして唯一のユニバーサルシアターだ。ユニバーサルとは、身体能力の違いや年齢、性別、国籍にかかわらず、すべての人が普遍的に、という意味をもつ。
障害者と健常者の区別も、子連れや盲導犬同行への無理解もない、誰もが幸せなシアター・オブ・ドリームス。
夢を実現させた女性とは──。
■一度は廃業の危機に陥るも、音声ガイド付きの映画館づくりに奔走
’14年11月、シネマ・チュプキの前身となる「アートスペース・チュプキ」が、北区のJR上中里駅前にオープン。
「この活動のそもそものきっかけが『街の灯』でしたが、自分たちでつくる映画館の名前には“光”にちなんだもの、それも暗闇を照らす“月”にまつわる言葉を探しました。そして、ふとアイヌ語を調べていて“チュプキ”と出合ったんです。
これだ、と」
ところが平塚さんは、映画館開業のための手続きがさまざま必要なことを知らずに、オープン翌日から廃業の危機に陥るのだった。
「お恥ずかしい話ですが、シティ・ライツ以来、目の前の困っている人のために何とかしたいとの思いだけで走り続けてきて、このときも事前に消防署や保健所への届け出が必要という興行場法のことすら知らなかったんです」