世界最高齢アプリ開発者・若宮正子さん(88歳)銀行員時代はそろばんができない「お荷物」行員だった
彼女には、2人の兄がいるが、結婚して独立していた。重くのしかかる母親の介護……。さらに話を続けてもらおうとすると、若宮さんは「ほらほら」とこう続けた。
「取材する人は『さぞ大変だったでしょう』と、介護を美談として聞こうとするんですよ。とくに婦人雑誌の人は、苦労したに違いないとしつこいけど、そんなに困ったことは本当に思い出せないんです。たしかに母は、もの忘れがひどかったけど、前日と同じおかずを出しても、毎回おいしいと食べてくれるから助かりました。忘れるっていい面もあるんですよ。
それに私は“不良”介護人ですから、おやつを忘れることなんかしょっちゅう。
1週間ぐらい母を預かってくれるショートステイを利用して、海外旅行にも行っていました。そのころだって『親を置いて旅行に行くなんて』と言う人がいたけど、そんなことに耳は貸しません。それでも母は100歳まで生きたのだからよかったんじゃない」
自宅にこもって母親の面倒をみることで社会とのつながりが減る人は少なくないが、その不安を解消してくれたのがパソコンだった。
「私がパソコンを買ったのは平成5年(’93年)だから、誰にでも扱いやすい『Windows95』が発売される前だったので、パソコンを持っている人はごく一部。