「母のような境遇の女性の力に」“弱者に寄り添う弁護士”寺原真希子さん 幼少期に経験した父親の壮絶DV【令和の寅子たち(2)】
父が暴力をふるうたびに、母と私と弟は家から逃げ出して、近所の家にかくまってもらう、そんな生活が高校卒業まで続きました。当時はDV防止法もなく、警察に行っても民事不介入で対応してくれない。母を助けることができず、自分の無力さを感じました」
彼女は、父親のDVに苦しむ母親の姿を間近に見てきたのだ。
「母は離婚したがっていましたが、私と弟を養う経済力がなかったので離婚ができず、父の暴力に耐えながら生活するしかなかった」
そんな母親から寺原さんは、“精神的自立は経済的自立から”と、幼少のころからずっと言い聞かされていたという。
「私が小学校高学年のときに、弁護士という職業があることを知り、将来、経済的に自立するためには、弁護士か医者になろうと」
中学生になると、法律への興味がより一層高まる出来事が起きる。
「公民の授業で、憲法第25条を習ったんです。“すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する”――。国民には“生存権”がある。
国家には生活保障の義務があるということを知りました。私は人間らしく生きる権利があるのだと解釈し、母のように苦しみを強いられる生活はおかしいという気持ちがより強くなりました」