西陣織伝統工芸士、パリでのショー実現させた“亡夫との約束”
「独立しろっていう主人の無茶ぶりがなければ、いまの私はなかった。不器用な主人なりに、常に私のことを認め、私の背中を押し続けてくれていたと思ってるんです。『まだまだ』っていうのも、『もっと頑張れ』ってことだった。いつか聞いたことがあるんです。どうしたら褒めてくれるのか、って。そしたら『勲章もらえるぐらいになれ』って。あと『パリでショーができるぐらいに』って。聞いたときは、そんなたいそうな目標を掲げられてしまったら、そら『まだまだ』やなって(笑)」
2000年代に入り、世間の着物離れが進むなか、西陣の業界も不況にあえいでいた。
「主人の前で、『最近、売れゆきが……』ってこぼしたことがあったんです。そしたら主人、またまたいいこと言ってくれたんですよ」
現在の小玉さんの工房には、額に入れて飾られた、帯とは違う、まるで絵か写真のような作品が多数展示されている。そしてその額には『非売品』の文字が。俊男さんは小玉さんに「売れないなら、売らないもの、売りたくないものを作れ。心配するな、お前が死んだら、その作品、俺が美術館を建てて飾ってやるから」