映画作家・大林宣彦「“余命三カ月がん”は撮影に役立った」
いつも命懸けで、遺言のつもりで映画を撮っています。だから、今回も治療のために撮影を先延ばしにすることは考えられませんでした。東京の病院の担当医に治療法を決めてもらいましたが、基本的には現場の唐津に滞在し、現場と唐津赤十字病院を行き来しながらロケを続けました。すると……その担当医の方が優秀だったのでしょう。勧めてくれた経口の抗がん剤がよい薬で、なおかつ驚くほど僕の体にあった。毎晩、病院で薬を服用し、翌朝、検査を受けてから撮影現場に、という日々を続けていたら、肺がんと骨に転移したがんが、奇跡的に消えたんです」
映画『花筐/HANAGATAMI』は、戦時中の佐賀・唐津を舞台に、「自分らしく生きて、自分らしく死にたい」と切実に願う若者たちを描く群像劇だ。
「何より、この映画の精神によって私は生かされているとも感じています。今回の作品こそは、映画人生の集大成として、いま撮らなければならない、そう強く思っていました。
だから、とても死んじゃいられねえやって(笑)」
反戦のへの強い思いが、がんを消し去ったのだろうか。笑顔を絶やさず、大林さんは語り続けた。