石川さゆり 当時では異例「結婚と歌」両立させた母の言葉
結婚は’81年。
「23歳で結婚したのかなぁ。この世界にいると、事務所が1カ月後、1年後のスケジュールまで組んでくださる。でも、それは仕事であって、自分自身の人生においては『この先、何を見て生きていきたいんだろう』という壁にぶつかったんです。そのとき“結婚=自分の家庭・生活”というふうに気持ちが向いたんですね。自分を取り戻して、自分の何かを見つけたかった。いま思うと、思春期の壁にいたのかもしれないですね」
歌手は「結婚=引退」が当たり前だった時代。人気アイドルだった森昌子も山口百恵も、結婚と同時に引退するなか、石川さんだけは、結婚と仕事の両立を選んだ。
「私が『結婚』と言ったとき、『じゃあ、もう歌えなくなるね』『引退するんだね』と、周囲からは言われました。でも、私はそういう考え方は寂しいと思った。だって、母が常々言ってくれたように、結婚と仕事の両立だって、やってみなければわからないじゃないですか」
石川さんの脳裏には、働きながら自分と弟を育ててくれた母の後ろ姿が浮かんでいた。
「当時の芸能界では異端児だったのかもしれない(笑)。