公開中映画が話題、坂本龍一指摘する「ナショナリズムの危険」
「僕は、以前から環境問題に強い関心があったから、ほかの人より自然のことはわかっているという自負が多少あったんです。でも、3.11の巨大な地震と津波が起こったことで、自然の力がこれほど大きいことを知らなかった、と強いショックを受けました。人間の文明は自然の力の前に、こんなにもろくも崩れ去るんだと」
3.11とがんを経験した坂本さんは、改めて人間が持つ本来の性質、“本性”(ほんせい)を見つめ直し始めた。
「人間はやっぱり、自分ひとりでは太刀打ちできないような巨大な問題を前にしたとき、そこから目を背けて、自分がこうであってほしい、ということに耳を傾けてしまうんです。だから、原発事故後の福島の場合でいうと『放射能は怖くない』とか、『笑っている人には放射能の害はないよね』なんていう、見え透いたウソにも、恐怖心が強ければ強いほど耳を傾けてしまう。これは“人間の本性”なんじゃないかと強く思うようになってきました。そういう本性に対して、『あなたは現実を見ていない』などと僕は軽々しく非難できません」
最近、日本で高まっているナショナリズムについては、人間の本性に、より注意しなければならないという。