かつては西洋医学も拒否…坂本龍一を変えた「がんと震災」
「監督から’12年の夏にオファーをいただいたとき、それほど深く考えないでOKしたんです。監督の能力と人柄がよかったから。それに、ちょうど’12年の夏は、前年の福島原発事故を受けて、原発再稼働反対のデモが各地で続いていた。めずらしく日本でも社会が変わるような雰囲気があったので、その激動を、僕を通して記録しておくのは意味があるかもしれないと思ったんです」
実際に『CODA』の前半では3.11後に改めて自然の力を思い知った坂本さんが、首相官邸前で再稼働反対のデモに参加するシーンがある。さらに自身で、津波や原発事故で廃虚となった町を訪れる。そんなさなかの’14年、坂本さんを病魔が襲う。
「がんがわかったのは3.11から3年後。これは、人間の体という“自然”の中に起こった“がん”という一種の“災害”のようなものでしょう。
それでまたショックを受けたんです」
坂本さんは、自分の健康には自信があった。
「僕は、40代ごろから食や健康には十分、気を使ってきたつもりだったんです。