“リアル陸王”は存在した!行田の40歳足袋店社長の奮闘
中澤さんは「きねや足袋」に26歳で入社。ろくに足袋をはいたことすらなかった。
「靴は歩くときのサポートをして足を守りますが、足袋は素足に近く、本来の足の機能を十分に使うように作られています。足指が地面をつかむようにしっかりアーチができて、土踏まずを形作る。はき始めはふくらはぎが張ったりしますが、しだいに姿勢はよくなり、私自身は腰痛がなくなりました」
足袋の機能性に驚くとともに、もの作りの楽しさにも目覚めた。
「ミシンの使い方から覚えました。足袋作りは、一つ一つが細かい作業です。昔ながらの職人さんから『目で覚えろ。
いちいち聞くんじゃねえ』と怒られることもありました」
職人経験によって自社製品への愛情と自信が育まれ、営業の場で生かされた。
「ただし、現状は厳しい。どんなに売れる商品を作っても、せいぜい年間何百足の世界だし、値段も2000~3000円が限界。やってもやっても収益は上がらない。これまでの足袋の発想に縛られず、新しい商品を開発しなければ、5年後、10年後に会社はつぶれてしまうと思い、焦っていました」