“リアル陸王”は存在した!行田の40歳足袋店社長の奮闘
そんなときに偶然出会ったのが、はだしでフルマラソンを完走することで有名な鍼灸師・高岡尚司さん。
「はだし感覚で走れる足袋の発想を持っていて、私も“これだ”とすぐに開発することに決めたんです」
しかしランニング足袋となると、長年の職人から見れば邪道。「社長の倅が好き勝手にやっている」という反発もあるかもしれない。そのため当初は、父親にも内緒で、ごく限られたスタッフのみで開発に取り組んだ。
「通常のシューズはスポンジ系のソール(靴底)と、アッパー(足の甲を覆う靴の上部)を接着剤で接合します。しかしMUTEKIでは、ソールを軟らかい天然ゴムにして、アッパーには手で縫いつける。こうしたこだわりで、しなりがよく、足との一体感が生まれる商品となりました」
’13年に新製品が完成。その数日前、これまで内緒にしていた2代目に新商品の完成を伝えると、いつも厳しい父親が「やりたいようにやりなさい」と認めてくれた。
「最初の2年は苦戦しましたが、徐々に知名度も上がって、今では年内の販売は予約すらお断りしている状況です。