越路吹雪に“生涯無報酬”で尽くした女性が守った「大切なもの」
一方、越路さんの不眠症のことは常に気にかけていた岩谷さんだが……。
「夫婦の生活とは距離を置いていたため、越路さんの自宅で先生を見たことはありません。でも、越路さんは不眠症を抱えたままで、特に公演中は眠れない……。夜は、ボクら若手のレコード会社のスタッフがお邪魔してね。越路さんは睡眠薬とお酒を飲んでリラックスした状態でマージャンをすると、途中でことんと眠りに落ちる。そんな越路さんを寝室に担いで、そーっと帰るのが仕事でした」(草野さん)
■胃がんで早世。葬儀の日も“付き人”に徹した……
昭和55年、越路さんが胃がんのため入院。病名は本人には知らされず、岩谷さんは内藤さんからではなく、越路さんの親族から真相を知った。
岩谷さんは見舞いの際も、ベッドサイドで看病する内藤さんに遠慮するように、顔だけを見せる程度だった。
同年11月、越路さんは56歳の若さでこの世を去った。葬儀では、家族席に座ってもおかしくないほどの間柄だった岩谷さんだが、会場に入りきれない弔問客を控室に案内する役目を買って出た。