「ニコラ・アンゲリッシュ ピアノ・リサイタル」ヨーロッパを席巻するピアニズムの真価に触れる
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1970年アメリカ生まれのピアニスト、ニコラ・アンゲリッシュが来日する。熱烈なピアノ・ファンが相手ならば、過去の来日時におけるソロ・リサイタルやオーケストラとの共演、さらには「ラ・フォル・ジュルネ音楽祭」での素敵なパフォーマンスでもお馴染みのアンゲリッシュについて、前置きなしですらすら話ができそうなところだが、一般の方々に彼の魅力を伝えることは、原稿用紙(今やPC)を前にしたこの期に及んでなかなか難しいことにはたと気がつく。そう、アンゲリッシュには、これといった強烈な個性が見当たらないのだ。しかしながら、「だったらだめじゃん」などと思うのは大間違い。強烈な個性というものは、一歩間違えば奇をてらった陳腐な演奏と紙一重であるということも認識しておきたい。アンゲリッシュには、そのあたりの世界とは全く無縁の領域に生息するピアニストとしての存在価値があるように思えるのだ。言い方を変えればオーソドックス。しかしそのオーソドックスの絶対的な高みとは、他に代えがたい価値であるということを知ってほしい。
特に今回のプログラムに並ぶドイツの作曲家たちの作品においては、オーソドックスであることの意味が大きく物を言いそうだ。