土井監督・有村架純が語る“忘れられない恋”「麦と絹、ふたりと一緒に生きているような感覚でした」
「この映画は、ほぼ順撮り(脚本に書かれたシーンの順に撮影していくこと。撮影のスケジュール上、脚本通りに撮影されないことも多い)に近いかたちで進められたので、最初から計算してテクニカルに組み立てていったというよりは、本当にひとつひとつ撮っていって、僕自身も彼らと一緒に生きている感覚でやっていったんです。僕らは台本という行き先の書かれた地図を持ってるんですけど、全体像から逆算して何かをつくっていくというよりかは、ひとつずつ撮っていって『ああ、このふたりは今日こうなったのか』ということに気付くような……なんというか、ちゃんと“歴史を刻んでいる”感覚でした。
だから、撮影が半分ぐらい終わった頃に麦が髪を切ってスーツを着るようになると、ずっと彼らに伴走している僕たちもだんだん切なくなってきて、同じ狭い部屋にいるのにふたりの会話がない、それを撮ることで僕たちも切なくなっていく(笑)。だから僕たちもふたりと一緒に時間を過ごして、一緒に何年間を生きたような感覚があったんです」
「最初はすごい楽しかったけど、時間が経つにつれて麦くんの顔つきも変わってくるし、空気感が変わっていくのを身に沁みて感じました。