2021年6月14日 23:00
宮本浩次、溢れる衝動で希望の歌を轟かす 有観客&配信で実現したバースデー公演『宮本浩次縦横無尽』レポート
「歌」が、「声」が、それだけでひとつの物語だった。その「歌」に感じたのは共感だとか、同情だとか、そんなよくある感情ではなくて、ひたすら「悲しい」という思いの発現だった。《流れるな涙 心で止まれ》と繰り返す歌に、どうしようもなく涙が溢れた。心が震えた。
「ジョニィへの伝言」(ペドロ&カプリシャスのカヴァー)で感じた「さみしい」という感情も、「あなた」(小坂明子のカヴァー)がもたらした「切ない」という感情もそうだった。自分を重ね合わせたり、何かを思い出したりするような、いわゆるポップミュージックに感じる共感とはまた別物の、感情の根源を揺さぶるような体験がそこにあった。これこそが宮本浩次の歌の力なのだと、大げさでもなんでもなく驚愕する。
2018年に生まれた、椎名林檎との共演曲「獣ゆく細道」は、この日は宮本ひとりで歌い上げるバージョンで披露されたが、ダークにスウィングするバンドアンサンブルが、とびきりリッチなラテンのムードを醸していた。
そこからシームレスに「ロマンス」(岩崎宏美のカヴァー)へと進むと、この歌の持つエモーションが、よりロックなサウンドアレンジで心を揺さぶる。歪んだギターの音にのせて切実な女心を激しく歌う宮本。