白鸚と幸四郎の弁慶親子共演、仁左衛門と玉三郎の「清玄桜姫」ほか歌舞伎座『四月大歌舞伎』の見どころ
加賀の国安宅関所で関守の富樫左衛門に咎められるのだが……。松本白鸚(A日程)と松本幸四郎(B日程)が日替わりで弁慶を勤めるというかつてない親子競演だ。白鸚はこれまで1150回弁慶をつとめており、史上最年長となる78歳での上演ともなる。
第二部は『絵本太功記尼ケ崎閑居の場』。本能寺の変を題材にした全十三段の義太夫狂言の名作だ。光秀が謀反を起こし最期を迎える十三日間を一日一段という形で構成されている。十段目の「尼ケ崎閑居の場」は歌舞伎の代表的な役柄が揃い「太十」という通称で人気だ。実悪の典型となる武智光秀のスケールの大きさ、息子十次郎と許嫁初菊の悲恋、祖母の皐月、母の操という三代の女性の悲しみが描かれる。
光秀の竹槍に刺された皐月は、苦しみながらも大罪をおかした息子光秀を諫める。また深傷を負って戻ってきた十次郎の戦物語も心を打つ。真柴久吉(羽柴秀吉)と佐藤正清(加藤清正)が登場し、時代物らしい歌舞伎の様式美も堪能できる。武智光秀を中村芝翫が勤める。
もう一本は文楽から歌舞伎に移された竹本の舞踊で『団子売』。年の初めに餅の曲搗きをする夫婦者の団子売がにぎやかに踊る。中村梅玉、片岡孝太郎の夫婦で。