でも年齢とともに発声も少しずつ進化してきて、最近はプッチーニに限らず少しずつリリコなものも歌えるようになってきた実感があります。もちろん、いわゆるドラマティックな太い声ではなく、私の声と表現で。蝶々夫人はもともとの設定が15歳ということもあって、柔らかい繊細な表現が必要なところがかなり多いと思います。そういうものを上手に生かして表現できればなと思っています」
共演するピアニストは厚い信頼を寄せる山岸茂人。
「歌い手って、本番の調子や感じ方次第で、リハーサルとは違う歌い方をすることがあるんですね。そんな時でも山岸さんはピタッと合わせてくれる天才だと思います。言葉では言えない感覚です。こうやるからねとか、打ち合わせなんかしません。
だから私はまったく自由に歌わせてもらうことができるんです。このシリーズでもすべて山岸さんに弾いていただいている、貴重な方です」
きっかけは9・11
森麻季 ⒸKano Hayasaka
「愛と平和への祈りをこめて」がスタートしたのは2011年だが、きっかけは2001年のアメリカ同時多発テロ事件にまでさかのぼる。
「9月11日、私はペンタゴンが攻撃を受けたワシントンにいました。