おとな向け映画ガイド 今週の公開作品から、世代を超えて共感できる3本をご紹介します。
若竹千佐子の芥川賞受賞作を映画化したのは『モリのいる場所』の沖田秀一監督。桃子さんを演じているのは田中裕子です。
朝起きて、トーストの食事をとり、病院へ。延々と続く待ち時間は、テレビの画面にでる時刻表示で表現してくれます。3時間近く待ってもお医者さんとかわす会話はほんの一瞬。たまに来る娘は、金の無心。そんなこと、気にしてはいられない。桃子さんの最大の関心事は、「地球46億年の歴史」なのです。
図書館で何冊も図鑑を借り、ノートにイラスト入りでまとめます……。
東北出身の桃子さん、故郷を飛び出して上京し55年たちますが、ひとりごとになると、お国なまりがぬけません。桃子さんが心のなかでつぶやく言葉もしっかり東北弁です。映画ではそれをなんと擬人化。寂しさ1(濱田岳)、寂しさ2(青木崇高)、寂しさ3(宮藤官九郎)という脳内キャラクターで見えちゃう化しています。彼らと桃子さん、しんみりと会話したり、時にはどんちゃん騒ぎをしたり。そんなぶっ飛び方が、ともすれば陰気になりそうなムードを楽しいものに変えています。もうひとり、「どうせ」(六角精児)というネガティブキャラもいて、これもかなりウケます。
そして回想のなかに登場する、若かりし昭和の桃子さん役は蒼井優。