2021年10月24日 10:00
野田秀樹インタビュー「演劇観が揺らぐくらいのインパクトがある」 NODA・MAP番外公演『THE BEE』9年ぶりの日本語版上演に向けて
それはちょっとびっくりした。イスラエルでやった時は、観客がすぐに「自分たちの話だ」と感じて、重々しい雰囲気になっていました。余談だけど、イスラエルで床屋に行ったら、「何をやってるの?」と聞かれたので「芝居だ」って言ったら、「どんなものをやってるの?」と。内容をかいつまんで話したら、床屋さんが「ちょっと」って途中でやめて店を出て行っちゃって。タバコ一本吸って、また戻って来て「……でも、俺たちはどうすればいい?」って。日本のサラリーマンの話だと言っているのに、自分たちの話だとすぐにわかっているわけですよ。ニューヨークの人間はあまりそう感じてなかった。報復に対してNOをはっきり示している人間が多いので、もう自分たちはその問題を超えていると思っているのかもしれない。
「でも、あなたの国の話でもあるんですよ」と言いたいですけどね。
「人間の信じているものの脆さは今、はっきりと出てくるかもしれない」
――9.11に触発されてこの作品を作られて、日本で2012年に再演した時は、前年に東日本大震災がありました。そして今回はコロナ禍で。偶然ではあるけれど、観客はどうしても出来事に重ねて作品を観てしまうところはあるんじゃないかと。