2021年10月24日 10:00
野田秀樹インタビュー「演劇観が揺らぐくらいのインパクトがある」 NODA・MAP番外公演『THE BEE』9年ぶりの日本語版上演に向けて
とは言っておきました。海外の公演では、はっきりスッと立って帰った人がいましたね。
見方が敏感な今だからこそ、かえっていいのかな、とも思います。差別意識なんてないかのように過ごそうとするけれど、やっぱり人間には……私も含めてですけど、根底にあるそうした意識に気づく瞬間がある。原作小説で筒井康隆がそういう人物を書いている、だから「そういう人がいる」とはっきり出てくることがこの作品の特徴ですからね。初演当時は、9.11とイラク戦争の流れがあって、報復の連鎖の話であることが強調されたと思うけど、本来の主眼は、なぜそれが起きるのかということ。人間の持つ暴力性ですよね。暴力はいけないと理性ではわかっていても、実際にその当事者になった時、どんな行動に出るのか。
今回は、そうした人間の根源的な部分に目がいくような気がします。
――ワールドツアーでは、土地によって受け止め方に違いがあったりしたのでしょうか。
観客側の反応や批評などは、どこもほとんど良かったことはむしろ驚きでしたね。普通は好き嫌いがありそうなんだけど。ただ意外に思ったのは、ニューヨークの人間は「これは自分たちの話だ」とは思わなかった、全然そういう感覚ではなかったということ。