「自分の作品性にすごく近い」コラージュアーティスト・河村康輔が語る『哀愁しんでれら』
いろんな恋愛もあるだろうし、価値観の違いもあると思うのですが、考えさせられましたね。
——そのように受けとった映画に対して、いざアートワークを手がける際には何を大事にされましたか。
河村最初は、映画の中に出てくるシーンやプロップ(映画の撮影用に使われる道具)的なものを使って、ギミックを入れて、もっとごちゃごちゃとコラージュしようかと考えていたんです。すごく幸せそうな場面写真、それに対比するような怖いシーンなど、いろんな素材を集めてもらっていて。でも、その最中に映画を観て。「こんな小細工する必要ないかも」と。
——そんなに潔く、方向転換できるものなのですか。
河村そうですね。
きっぱりと元のアイデアはあきらめられました。すごく考えさせられる映画でしたし、僕自身がビジュアルを作るのはいい意味で楽で、絶対にいいビジュアルになるなと潔くなれました。なんだろう、映画のほうにこんなにスパンとやられちゃったら、こっちも応えなければならないというか。そこは決断が早かったですね。最初の考えは捨てて、グラデーションにするでもなく、白か黒かくらいのわりきった二面性、ゼロ地点と最後の100を両極端で表すことにしました。