誰もがもてはやす「才能」の正体を問うハイバイ『投げられやすい石』開幕
再会した佐藤は憔悴しきっていて、かつての自信満々な姿はどこにもなかった——。
『投げられやすい石』2011年公演より(C)曳野若菜
劇中、佐藤はひどい目に遭いまくる。秀逸なのは物語序盤の、コンビニ店員との攻防だ。きわめて高圧的な店員と、徹頭徹尾挙動不審の佐藤。かつて自らの才能で輝いていた男の末路として、まずガツンと観客の胸を刺す。果たして、彼を輝かせ、彼を貶めたものは何なのか。あの頃自分たちが信じ切っていた「才能」とは何だったのか。山田と佐藤とともに、観客もそれを問い直す。
コロナ禍でいくつかの公演中止を余儀なくされた岩井が、今回は客席側にも工夫を凝らす。ハイバイ初の試みとして「通常席」と、両隣1席空けの「ゆったり席」の2種類のチケットを用意したのだ。また、22日(日)には劇作家の加藤拓也、俳優の藤原季節と松本穂香を迎えてのアフタートークが企画されている。公演は11月24日(火)まで、東京芸術劇場シアターイーストにて。長野・三重公演あり。
文:小川志津子
ハイバイ『投げられやすい石』
作・演出:岩井秀人
出演:井上向日葵 / 岩男海史 / 町田悠宇 / 山脇辰哉
【東京公演】
2020年11月18日(水)