「答えじゃなく共感をくれる、演劇というツールの特性が生かされた作品です」~ミュージカル『next to normal』演出家・上田一豪インタビュー~
――なるほど。そういう意味では『N2N』も、そこにチャレンジしている作品ですよね。
上演中のミュージカル『next to normal』2024年版より(写真提供:東宝演劇部)
そうですね。渡せるのは多分、「生きてたらこういう事象が起こり得る、けどなんか、諦めなくてもいい、かもしれないよ?」くらいのもので(笑)、答えを提示する作品じゃない。そこも僕の好きなところで、演劇がもたらす“救い”って、答えをもらうことより共感できることにある気がするんですよね。この作品の登場人物たちみたいに、病気とか家族関係で苦しむことって誰にでもあって、それは友達に話すようなことじゃないし、話したところで「大変だね」で終わっちゃうから孤独になる。そんな時、自分と同じように苦しんでる人が、目の前で同じように心を動かしているのを見ることで、自分はひとりじゃないって思えたりすると思うんです。人が心を動かしているのを目の前で見るって、現実で経験するのは難しいから、それが演劇というツールの強さなのかなと。
『N2N』はその強さが生かされた、本当に素敵な作品だなあと思っています。
取材・文:町田麻子
<公演情報>
ミュージカル『next to normal』
音楽:トム・キット
脚本・歌詞:ブライアン・ヨーキー
訳詞:小林香
演出:上田一豪
【配役:キャスト】
ダイアナ:望海風斗
ゲイブ:甲斐翔真
ダン:渡辺大輔
ナタリー:小向なる
ヘンリー:吉高志音
ドクター・マッデン:中河内雅貴
【東京公演】
2024年12月6日(金)