「答えじゃなく共感をくれる、演劇というツールの特性が生かされた作品です」~ミュージカル『next to normal』演出家・上田一豪インタビュー~
「自分の色を出すことよりも、作品が素敵に輝くことを考えたい」
――お話を伺っていると、無理に自分の色を出そうとするのではなく、作品とキャストを尊重しようとする姿勢が窺えます。それは演出された舞台を拝見しても常々感じていたことで、偉そうな言い方になりますが、それが演出家・上田一豪の素敵なところだなと。
素敵かどうかは分かんないですけど(笑)、作品を自分の色に染めたい、みたいな欲求がないのは確かですね。オリジナル作品を一から作るとなったら、作家と演出家ってすごく密接だから、演出家も自分の色を出す必要があると思います。でもすでに別の演出家がそれをしたあと、要は“リバイバル”のような形で演出するにあたっては、それをする必要性を感じないし、そこに興味もないんですよね。それよりも、その作品が一番素敵に輝くことを考えたい。
――では一から、しかも演出だけではなく脚本も担ったオリジナルミュージカル『この世界の片隅に』には、また違う意気込みで臨まれたのでしょうか。
ミュージカル『この世界の片隅に』より。
(C)こうの史代/コアミックス・東宝製作:東宝
あれも原作がありましたし、自分で企画したわけではないので一からとは言えないところがありますが、“リバイバル”とはやっぱり随分違っていましたね。