「答えじゃなく共感をくれる、演劇というツールの特性が生かされた作品です」~ミュージカル『next to normal』演出家・上田一豪インタビュー~
この原作を自分がミュージカル化するならこうです、という確固たるアイデアを持って脚本を書き、演出していました。漫画原作の舞台では再現性を求められがちですが、それならアニメーションでいいじゃん、漫画が動いてたほうが絶対素敵じゃんって、僕は思うタイプ。舞台化する意味のある構造にしたいという話を最初にさせてもらって、具象ではなく象徴性を取ろう、というコンセプトで進めた作品です。
――その象徴性が功を奏し、繊細で上品な素晴らしい作品に仕上がっていて感銘を受けたのですが、あまりに繊細であるがゆえに気になっていたのは、創作の過程で「伝わらないかも?」みたいな不安に駆られることはなかったのだろうかと。伝わらなかったら原作を読んでいただけたらなぁて思ってました。例えば『レ・ミゼラブル』は僕がミュージカルを好きになったきっかけの作品で、今でも大好きだけど、分かるから好きになったわけじゃない。初めて観た時には分からなくてやっぱり僕は原作を読んだんです。ミュージカルとして全てを伝え過ぎて、観客の受け取り方まで限定しちゃう作品より、それぞれが自分なりに受け取れる作品のほうが、僕は好きなんです。
作る側としても、どこまでどう伝わるかにチャレンジできるところが、演劇の面白さなのかなと思います。