支配人・岩波律子氏に聞く、ミニシアターの草分け・岩波ホールの“re:START”
問い合わせのお電話がない。もちろん劇場にはどなたもいらっしゃらないわけで、これほど寂しいことはありませんでした。お客様と接する機会がまったくないことが、本当につらかった。お客様の声が、再開に向けての大きな原動力になったことは間違いないです。
それから私どもの場合、配給会社さんらとそれこそ膝を突き合わせて、さまざまなことを徹底的に話し合う。題名ひとつでも100案ぐらい出したりすることもある。そうして1本の映画を皆様にお届けしているんですね。今回の休業期間というのは、この現場仕事のことを思い出しまして、配給会社さんをはじめとする関係者の皆様もまた同志なんだなと実感しました」
再開しようとしたら更なる問題が。上映する作品がない!
劇場の再開を考え始めたのは、緊急事態宣言の解除が視野に入り始めた5月中旬ぐらい。ただ、ここで問題に直面する。
「私ども岩波ホールは、たとえば1カ月半ならその期間、1本の作品を途中で打ち切ることなく上映し続ける。でも、今回休業に入る前に上映していた作品の配給会社さんにはびっくりされたんですけど、その後上映を予定していた3作品に関しては、“上映するならばこういう不安な形ではなく、万全の形でやりたい”ということで、来年に公開を延期することですんなりとお話がまとまったんですね。