ジェーン・バーキン没後一年追悼企画「ジェーン B.とアニエス V. ~ 二人の時間、二人の映画。」として、1987年の作品『アニエス V. によるジェーン B.』と『カンフーマスター!』が、デジタルレストア版・新訳日本語字幕版で公開されることが決定した。ジェーン・バーキン一周忌にあたる7月16日(火)には、娘シャルロット・ゲンズブールが母親の真実の姿に迫ったドキュメンタリーで、バーキンの遺作となった『ジェーンとシャルロット』を、バーキン本人と交流のあった著述家の村上香住子氏、音楽評論家の松山晋也氏、茶道家の木村宗慎氏、DJの岡村詩野氏を招いて、東京(ヒューマントラストシネマ有楽町)と大阪(テアトル梅田)で1日限定特別上映することも決定。『アニエス V.によるジェーン B』この度解禁されたポスターデザインを手掛けたのは、日本における映画ポスターデザインの第一任者、大島依堤亜氏。今回3つのパターンのデザインを発表した。ジェーン・バーキンのBとアニエス・ヴァルダのAを大胆に配置し、フランスを代表する2人の女性の世界観を、大島氏らしいユーモアとフェミニンでスタイリッシュな表情に仕上げている。これまでフランソワ・オゾンやアキカウリスマキなどのヨーロッパ映画を多数手掛けている大島氏だが、アニエスとジェーンの作品を手掛けるのはこれが初めて。『カンフーマスター!』予告編を演出したのは、『ジェーンとシャルロット』の遠山慎二氏。セルジュ・ゲンズブールはもちろん、「ドジャース」や「ヤードバーズ」などのヒットチューンを配したクールな演出に仕上げた。シャルロット・ゲンズブールやルー・ドワイヨン、ジャン=ピエール・レオーなどの顔が見られるのも、フランス映画ファンには嬉しい。また今回、日本語字幕も新訳版で公開。『アニエス V.によるジェーン B.』は、『ジェーンとシャルロット』『恐るべき子供たち 4Kレストア版』の横井和子氏、『カンフーマスター!』は『ソウルに帰る』『エッフェル塔~創造者の愛~』の橋本裕充氏が手掛けた。『アニエス V. によるジェーン B.』と『カンフーマスター!』は8月23日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、テアトル梅田、京都シネマ、シネ・リーブル神戸ほか全国にて順次公開。(シネマカフェ編集部)
2024年07月05日アニエスべーでは2023年10月14日(土)より東京・代官山T-SITE ガーデンギャラリーにてSigne agnes (b.) 『アニエスべーを巡る』展を開催いたします。Signe agnes (b.)「不意打ちだったの。新聞に載ることになって、(掲載名をどうするかと聞かれたので)新聞の雑報欄のようにフルネームを載せず、『agnes b. とだけ書いて下さい』と伝えたわ。その後、自分の手書き文字をロゴにしたの」ブランド創始者のアニエス・トゥルブレは1941年にフランス・ヴェルサイユで生まれました。アニエスベーの最初のショップは1975年、パリのレアール地区にある古い肉屋を全面改装して開業しました。この1号店は、オフィスやアトリエとしてだけではなく、表現の場あるいは出会いの場としても使われました。壁には、グラフィティやさまざまなポスターが貼られ、鳥が自由に飛び回り、座って会話を楽しみ、音楽を聴くことができる場所でした。アニエスベーは1983年の日本初上陸から今年2023年で40年を迎えます。本展ではパリの1号店の再現と、パリの街並みを新しい形で体感いただける没入型ARスペース、アニエス・トゥルブレ自らがこれまで撮影してきたフォトアーカイブなど、いつの時代にも大切にしてきた遊び心と驚きが詰まった空間となっています。アニエスベーを巡る本展をぜひお楽しみください。■展示会場:代官山T-SITE ガーデンギャラリー■展示期間:2023年10月14日(土)~22日(日)■開催時間:11:00~20:00※LINEでの完全予約制 : Signe agnes (b.)特設ページ: その他、アニエスベーを巡る様々なポップアップやイベントが目白押し!〈POP-UP〉■9月27日(水)~10月10日(火):日本橋三越本店 本館1Fステージ日本橋三越本店 本館1F ステージにてPOP-UPストアをオープンいたします。パリのエスプリを感じるアニエスベーらしいお洋服やバッグが揃います。22,000円以上お買い上げの方にオリジナル風呂敷のギフトも。■10月11日(水)~10月17日(火):新宿伊勢丹店新宿伊勢丹 本館1F バッグ売場プロモーションスペースにてポップアップストアをオープン。アルチザンの手作業によりディテールまでこだわったフレンチレザーのバッグや遊び心のあるフォトプリント、そしてアニエスの愛するドクターズバッグがデザイン豊富に登場します。〈Event〉■10月7日(土) 12:00~18:00:日本橋三越店■10月13日(金) 13:00~19:00:新宿伊勢丹店クリエイティビティとクラフトマンシップを掛け合わせたものづくりを続けている「sutta」とのコラボレーションにより、シルクスクリーンプリントイベントを開催。イベントスペースでご購入いただいたお客様に柄とカラーを選んでいただき、その場で刷り上げてお渡しいたします。「my agnes b. story」公開中!アニエスベー公式オンラインブティックのウェブサイトでは、40人のキャストにスポットを当ててそれぞれの物語をフォトストーリーやイラストを交えながら1年を通して紡ぐスペシャルコンテンツを公開中!ブランドの歴史を紐解く10月は、タイムレスな魅力で多くのファンを惹きつける俳優やクリエイターにご登場いただきます。詳細はこちら: ※「Signe agnes (b.)」の正式表記は「Signe」の“e”の上に´(アキュート・アクセント)、「agnes」の“e”の上に`(アクサン・グラーブ)「agnes b.」の正式表記は「agnes」の“e”の上に`(アクサン・グラーブ)「my agnes b. story」の正式表記は「agnes」の“e”の上に`(アクサン・グラーブ) 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年10月04日2K修復を経てスクリーンに甦る、アニエス・ヴァルダ監督の代表作『冬の旅』より、第二弾ビジュアルが解禁され、著名人からのコメントも到着。またトークイベントの開催が決定した。本作は、2019年3月に生涯現役を貫いて90歳で逝去した映画作家アニエス・ヴァルダの、劇映画の最高傑作との呼び声も高い代表作。フランス片田舎の畑の側溝で、凍死体として発見された若い女モナの死に至るまでの数週間の足取りを、路上で出会った人々の証言から辿っていく1985年の作品だ。アニエス・ヴァルダ Photo by Thomas Niedermueller/Getty Images第42回ヴェネチア国際映画祭では最高賞の金獅子賞に輝き、主演を務めたサンドリーヌ・ボネールも第11回セザール賞最優秀主演女優賞を受賞。日本では1991年に劇場公開され、その後も限定的な上映は何度かあったが、今回は、2014年にアニエス・ヴァルダ本人と撮影監督を務めたパトリック・ブロシェによる監修で2K修復されたDCP素材による上映となる。解禁となった第二弾ビジュアルは、2014年に修復されたことを記念して、フランス本国で作られたキーアートと同じカットを使用したものとなっている。親指を立てて道路脇に佇むモナの、遠くを見据えるような表情が印象的だ。併せて、ヴァルダに魅了され、彼女の作品を愛する著名人からのコメントも解禁。コラムニストの山崎まどかは「『冬の旅』は永遠に新しく、鮮烈で、観る者の胸に切実に訴えかける」と寄せ、作家の松田青子は「この理不尽で不条理な現代社会の中で、あきらめない、我慢できない女性の心には、モナがいる。自由を希求する彼女の不屈の魂は、永遠に生きている」とコメント。映画執筆家の児玉美月は「ヴァルダがもたらした〈変革〉は、これからもたゆむことなく引き継がれてゆくに違いない」、映画研究者/明治学院大学教授の斉藤綾子は「ヴァルダが遺してくれた奇跡のようなモナの姿は、その悲惨な生と死を超えて、私たちの記憶の中で永遠に力強く生き続ける」と、初公開から30年以上経ったいまなお、観客の胸を打つ作品であることに言及した。また、シアター・イメージフォーラムではトークイベントの開催が決定。初日11月5日(土)11時25分の回上映後に斉藤綾子が、11月6日(日)13時50分の回には山崎まどかが登壇する。詳細はシアター・イメージフォーラム公式サイトにて。『冬の旅』は11月5日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:冬の旅 2022年11月5日より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次にて公開© 1985 Ciné-Tamaris / films A2
2022年10月27日映画作家アニエス・ヴァルダ監督の代表作の1つに数えられながらも、初公開以来、長らく日本で劇場上映されてこなかった“漂流する女性”映画の金字塔的作品『冬の旅』が10月下旬より公開決定。ポスタービジュアルも解禁となった。2019年3月に生涯現役を貫いて90歳で逝去したアニエス・ヴァルダ。訃報に際しては、マーティン・スコセッシやカトリーヌ・ドヌーブ、ミランダ・ジュライ、さらにマドンナ、パティ・スミスなど、映画界に留まらず世界中の人々が哀悼の意を表した。また、彼女から影響を受けたと語る映画監督も、グレタ・ガーウィグ、ケリー・ライカート、レナ・ダナム、アリーチェ・ロルヴァケルなど枚挙にいとまがなく、世界中の人々から敬愛されている。アニエス・ヴァルダアニエス・ヴァルダは28歳の時、後に「ヌーヴェルヴァーグの最初の映画」と評されることになる『ラ・ポワント・クールト』(54)を発表して一躍注目を集め、『幸福(しあわせ)』(64)では第15回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞し、世界に認識された。以後もフィクションとドキュメンタリーを縦横無尽に行き来し、常に市井に生きる人々の飾らない姿を活写し続けた。その長年の功績が讃えられ、2015年にはカンヌ国際映画祭名誉パルムドールを、2017年には米アカデミー賞名誉賞を受賞している。そんな彼女の劇映画の最高傑作との呼び声が高い作品が、1985年に発表された本作『冬の旅』。フランス片田舎の畑の側溝で、凍死体として発見された少女モナ。彼女の死に至るまでの数週間の足取りを、路上で出会った人々の証言から辿っていく、という物語。本国フランスでは、当時のアートシアター映画としては異例の100万人超えの観客動員を記録し、ヴァルダ最大のヒット作といわれている。第42回ヴェネチア国際映画祭では最高賞・金獅子賞に輝き、主演サンドリーヌ・ボネールもセザール賞最優秀主演女優賞を受賞するなど、作品も高く評価された。だが、それから6年遅れた日本での初公開時の観客の反応は鈍く、正当に評価されたとは言い難いものとなった。今回、30年以上の歳月を経て、2022年3月、東京・国立映画アーカイブで行われた特集「フランス映画を作った女性監督たち-放浪と抵抗の軌跡」における一度限りの上映は、早々に満席完売に。奇しくも、2022年の日本では、ヴァルダも好きな監督の1人と公言し、同じベルギー出身の女性監督シャンタル・アケルマンの特集上映が盛況を呈しており、また『冬の旅』と同じく、「漂流する女性」を描き高く評価されつつも、長らく日の目を浴びてこなかったバーバラ・ローデン監督・脚本・主演を務めた『WANDA』も日本初公開を迎えている。なお、今回劇場公開で使用される素材は、2014年にヴァルダ本人と本作の撮影監督を務めたパトリック・ブロシェによる監修で2K修復された、DCP素材となる。『冬の旅』は10月下旬、シアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:冬の旅 2022年10月下旬、シアター・イメージフォーラムほか全国にて公開© 1985 Ciné-Tamaris / films A2
2022年07月26日《text:山崎まどか》映画のスタイルを決めるのは監督だ。では、映画を撮る監督たちはファッションにも自分のスタイルを持っているだろうか?映画祭や授賞式でのフォーマルウェアや、撮影現場における実用一点張りの服装から読み取るのは難しい。しかし、黄金期のハリウッドの監督たちはスーツでビシッと決めて撮影に当たっていた。カジュアルな時代になっても、ジョン・カサヴェテスやウディ・アレンなど、その服装からも映画のスタイルを読み取れる監督たちがいた。そんな「スタイルを持つ監督」で、いま真っ先に挙がる名前といえばウェス・アンダーソンだろう。トレードマークはN.Y.五番街のテーラー「Mr. NED」で仕立てたコーデュロイのスーツとクラークスのワラビー。これがストップモーション・アニメ『ファンタスティックMr.FOX』の主人公のファッションの原型となった。スーツに合わせるのはボタンダウンのシャツとニットタイ。授賞式でもヴェルベットのスーツにボタンダウンを合わせていた!『ダージリン急行』でも過酷なインド・ロケに真っ白なスーツで撮影にのぞむなど、服装に対するこだわりは本物である。映画と同じく、アメリカのトラディショナルな美学にギーク的なツイストを加えたようなスタイルだ。女性監督の筆頭は、やはりソフィア・コッポラ。いつもすっきりとしたシンプル・シックの究極形のようなファッションだ。男物の「シャルべ(Charvet)」のシャツに黒のシガレットパンツ。靴はフラットシューズかスニーカー。そんなミニマルなスタイルに、「エルメス(HERMES)」のバッグや「カルティエ(CARTIER)」の時計を合わせるのが彼女流の贅沢。『オン・ザ・ロック」』でラシダ・ジョーンズ演じるヒロインが着ていた服はソフィアの普段着そのもの。撮影現場の写真を見ると、主演女優と監督がまったく同じグリーンのワークパンツをはいている!自分が撮る映画のヒロインとほぼ同じファッション・スタイルの監督といえば、ナンシー・マイヤーズもそうだ。ボーダーシャツにトレンチコート、テイラード・スーツ。色味を抑えたシックな服装だけではなく、髪型まで親友の女優ダイアン・キートンにそっくり!そのまま本人主演で『恋愛適齢期』を撮っても違和感がない。カジュアル・スタイルと一線を画するお洒落上級者といえば、ポール・フェイグ監督。サヴィル・ロウの「アンダーソン&シェパード(ANDERSON & SHEPPARD)」でスーツを仕立て、「トム・フォード(TOM FORD)」のシャツを愛する男である。撮影現場でも常にスーツで、パンデミックで隔離生活を余儀なくされた昨年も、自宅で毎日スーツを着替えて、ダンスをしながら様々なカクテルを作る動画をSNSで発表してファンを楽しませてくれた。彼の作品『シンプル・フェイバー』でブレイク・ライブリーが着ているマニッシュなスーツスタイルは、衣装デザイナーがポール・フェイグのファッションを参考に考えたものだ。スポーツウェアやヒップホップ的な味付け、そしてカラフルな色でいつも楽しませてくれるのがスパイク・リー。『ブラック・クランズマン』で2019年のアカデミー賞にノミネートされた時も、周囲が黒のタキシード一色なのに対して、彼は英国のガーナ系デザイナー、オズワルド・ボーテングが仕立てたパープルのスーツとキャップ、『ドゥ・ザ・ライト・シング』に登場したLOVEとHATEのリングで決めていた。2018年のアカデミー賞にバラ模様の「グッチ(GUCCI)」のアンサンブルで登場したのが、ヌーヴェル・ヴァーグ時代から長きに渡って活躍した女性監督のアニエス・ヴァルダ。若い頃からのトレードマークであるボブのヘアスタイルが白髪になったら二色に染め分けて、より自由な色使いのファッションを楽しむようになった。『落穂拾い』以降は本人が登場するドキュメンタリーが彼女の作品の主流となり、JRとの共同監督作品『顔たち、ところどころ』でも、黒に大きな赤のドットのジャケットにヴェルヴェット・パンツの組み合わせなど、チャーミングなスタイルを見せてくれた。彼女の映画のスタイルの変遷と、そのファッションの発展を重ね合わせてみると面白い。やはり監督のファッション・スタイルは、彼らの撮る映画のスタイルも物語っているのだ。(text:山崎まどか)
2021年04月23日今回のコロナ禍のエンタメ業界において危機が叫ばれたひとつに挙げられるのがミニシアターだ。その苦境が多くのメディアで伝えられたことは記憶に新しい。緊急事態宣言解除後、営業が再開されたものの、その現状は厳しい状況が続く。その置かれた状況は老舗のミニシアターであっても例外ではない。50年以上続き、ミニシアターの草分け的存在である岩波ホールもまた、これまでにない事態に直面した。いち早い劇場の休業から、今年上映が予定された作品の来年公開への延期。そして休館から約4カ月、過去に上映した名作を集めた特集上映<岩波ホールセレクション>で再スタートを切る。老舗ミニシアターがこれからどんな“re:START”を切るのか?岩波ホールの岩波律子支配人に話を聞いた。2月下旬にいち早く休業を決定。その決断に至った理由は?はじめに、岩波ホールが劇場の休業を決めたのは2月下旬のこと。まだシネコンなど多くの映画館は稼働している頃だった。その中で、いち早く劇場を閉める決断に至った理由はどこにあったのだろうか。「正直申しますと、もう少しやりたい気持ちはありました。ただ、その時点で、爆発的な感染拡大が世界で起きていましたし、おそらく日本もその波は避けられない。そう遠くはないところで劇場を閉めなくてはならないだろうなと。その中で、やはり考えたのは安全面です。万が一の可能性でも、感染者を出してしまったらお客様に多大なご迷惑がかかりますし、スタッフの安全も守れないことになってしまう。また、一度、そういう事態が起きますと、やはりお客様もなかなかお越しになりづらくなる。どうしても足が遠のいてしまうと思うんです。それで、苦渋の決断でしたけど、いち早く、館を閉めることにしました。当時、上映されていた作品の配給会社さんにはご迷惑をおかけしてしまったんですけど」岩波ホールの場合、エキプ・ド・シネマの会(※世界の埋もれた映画を発掘・上映することを目的とした岩波ホールの会員組織。“エキプ・ド・シネマ”はフランス語で“映画の仲間”)の会員をはじめ、長年にわたって館を支持するファンが多い。そのことから分かるように、シニア層がメイン。映画館に長年通ってくれている常連への考慮もあったという。「高齢の方の病状が悪化する事例が多く伝えられていましたから、やはり私どもとしてはひとりもそういう方を出したくない。大切なお客様ですから、なにかあってからでは遅い。それも早く決断した理由のひとつですね」さらに岩波ホールは自社ビルであることから、他のフロアへの配慮も考え、独自の判断が求められた。「ビル全体のこととして考えなければならなかったところもありました。もし万が一、私どものホールで感染が起きてしまったら、テナントとして入ってくださっている各所の皆様にもご迷惑がかかる。皆様それぞれに経営がありますから、そこに支障をきたすようであってはならない。そこも考慮しました。現に、今回の劇場を開けるにあたっても、全フロアにご挨拶にうかがって、エレベーターで混むことがないようにといった対策をご説明して、再開に至っています。早く閉めすぎと思われた方もいらっしゃると思うんですけど、私どもとしては正しい判断だったのかなと思っております」お客様が来ない、問い合わせの電話もない。休業期間中に思ったことコロナ禍での、ミニシアターをめぐる大きなムーブメントとしては、クラウドファンディングの“ミニシアター・エイド基金”が記憶に新しい。有志が声を上げて始まったミニシアター・エイド基金は目標額を大きく上回り、3億円を突破。支援の輪が広がった。ただ、先に触れたように岩波ホールは自社ビル。大手メジャーのシネコンでもないが、テナントとして間借りしている多くのミニシアターともちょっと立場が違う。そういう微妙な立ち位置で、このムーブメントは遠巻きに見るしかないところがあった。「置かれた状況、映画館としての気持ちとしては同じなんですけどね(笑)。これは仕方がないです。私どもとしては、自分たちでやっていくしかないなと思いました」ただ、こうしたムーブメントが起きたことはうれしかったという。「ミニシアターをこれだけの方々が大切な場所と思ってくれていたことは、すごくうれしかったです。私どもの映画館にも、“少しでも早く開くことを待ってます”とか、“まだ始まらないんですか?”とか、皆様からの声が寄せられて、それが再開に向けての大きな励みになりました。年に1回、会員の方とお会いする会を実施しているんですけど、創立(1968年)した翌年から岩波ホールに通われている方もいらっしゃるんですね。お話しすると、映画とともに人生があったような方ばかり。私も気持ちは一緒です。ですから、私どもは映画を届ける側で、会員の皆様はそれを受け取る側ですけど、気持ちとしては映画の同志。そういう方がいらっしゃって映画館を支えてくださっていることを、あらためて実感する機会になりました。休業期間中はオフィスにいても電話が鳴らない。問い合わせのお電話がない。もちろん劇場にはどなたもいらっしゃらないわけで、これほど寂しいことはありませんでした。お客様と接する機会がまったくないことが、本当につらかった。お客様の声が、再開に向けての大きな原動力になったことは間違いないです。それから私どもの場合、配給会社さんらとそれこそ膝を突き合わせて、さまざまなことを徹底的に話し合う。題名ひとつでも100案ぐらい出したりすることもある。そうして1本の映画を皆様にお届けしているんですね。今回の休業期間というのは、この現場仕事のことを思い出しまして、配給会社さんをはじめとする関係者の皆様もまた同志なんだなと実感しました」再開しようとしたら更なる問題が。上映する作品がない!劇場の再開を考え始めたのは、緊急事態宣言の解除が視野に入り始めた5月中旬ぐらい。ただ、ここで問題に直面する。「私ども岩波ホールは、たとえば1カ月半ならその期間、1本の作品を途中で打ち切ることなく上映し続ける。でも、今回休業に入る前に上映していた作品の配給会社さんにはびっくりされたんですけど、その後上映を予定していた3作品に関しては、“上映するならばこういう不安な形ではなく、万全の形でやりたい”ということで、来年に公開を延期することですんなりとお話がまとまったんですね。ということで、その3作品が来年に回ってしまった。そのため、いざ6月ぐらいからの劇場再開が視野に入ったとき、8月22日から公開を予定している『シリアにて』までの間、上映する作品が不在といいますか。ぽっかり空白になってしまった。これは困ったなと(笑)」『シリアにて』8月22日(土)公開(C)Altitude100 - Liaison Cinematographique - Minds Meet - Ne a Beyrouth Filmsしかも、『シリアにて』公開後の今秋からは元々予定されていた改修工事が。劇場が再びオープンするのは2021年の2月となる。「このままではいけない。なにか映画をお届けしよう」ということで、急遽組まれた特集プログラムが<岩波ホールセレクション>だった。「幸い、今回上映が中止や延期となった昔からおつきあいのある配給会社の皆様から、この機会にという声をいただいたので、リストアップしていただいたんですけど、結構いい作品の権利をまだお持ちで。かつて岩波ホールで上映してはいるんですけど、私たちもあらためて観てみたい作品がいっぱいあった。それで突貫工事じゃないですけど、急いでプログラムを組みました」名監督たちとの思い出深い作品も。岩波ホール過去の名作を再上映プログラムは、ムヴィオラ配給作品『オレンジと太陽』が第1作目として6月13日から19日まで上映済みで、現在は同配給の『パプーシャの黒い瞳』を上映中。この後も、岩波ホールで上映された過去の名作が、配給会社ごとに次々と上映される。『パプーシャの黒い瞳』6月20日(土)~6月26日(金)上映(C)ARGOMEDIA Sp. z o.o. TVP S.A. CANAL+ Studio Filmowe KADR 2013「我ながらと言ったらおこがましいんですけど、名作シリーズと言っていい、なかなか見ごたえある作品がそろったなと思っております。いずれの作品も思い出深いのですが、中でも、ザジフィルムさんにお願いして実現したアニエス・ヴァルダ特集は組めて良かったです。(※アニエス・ヴァルダはベルギー出身の映画監督)昨年、お亡くなりになってしまったのですが、ヴァルダさんは本当にパワフルな女性で。もっと長生きするものと思っていたので、まだお亡くなりになったのが信じられないところがあります。何度かご一緒する機会に恵まれたのですが、私の中では“肝っ玉かあさん”と言いますか(笑)。社会活動家やフェミニストといったパブリックイメージがあると思うんですけど、おっかさんと呼びたくなる、真の意味で、強い女性でした。本当にお母さんみたいな人で、常に周囲に目配りしている。岩波ホールの前総支配人、高野(悦子)が存命だった頃、フランスでご一緒したことがあって、お昼を食べないかと言われたのでついていったら、なんとご自宅で。台所で料理を作り始めたら、ずっと作っていてテーブルに戻ってこないんです(笑)(※“高野”は正しくははしご高)。その後日本にいらしたときにも、私とたまたま一緒に帰ることがあったんですけど、“この後食べるごはんはあるの?”と聞いてくる。それから、銀座の山野楽器に行きたいということでお連れしたことがありました。なんでかなと思ったら、ビデオコーナーで夫であるジャック・ドゥミ監督のソフトをチェックし始めて、“コレは権利が切れてるはず”とかぜんぶチェックしていましたよ(笑)。それぐらい目配りの人でまめ。おそらくジャック・ドゥミ監督は相当、彼女に助けられたんじゃないでしょうか」特集:アニエス・ヴァルダ監督 (※写真は『落穂拾い』)7月18日(土)~8月7日(金)上映(c)Cine Tamaris 2000岩波ホールとゆかりの深い監督といえばポーランドの巨匠、アンジェイ・ワイダも外せない。彼の作品は遺作となった『残像』が上映される。「何度も来日してくれましたし、いろいろな思い出がある監督さんです。1987年に京都賞の思想・芸術部門を受賞されて、賞金が4500万円と聞いて、私たちは“これで次の作品が撮れるだろう”なんて考えていたら、ワイダ監督はこれを基にポーランドのクラクフに日本の美術館(日本美術技術センター)を作りたいと。それで高野(悦子)も協力して募金活動を一緒に行ったのはいい思い出です。日本の文化や美術を大切してくださる監督さんでもありました(※“高野”は正しくははしご高)」『残像』6月27日(土)~7月3日(金)上映(C)2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 - ?odz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.そんな<岩波ホールセレクション>だが、この上映の機会についてはさまざまな思いがあるという。「本も映画もそうなのですが、再度観たり、読むと印象がずいぶん変わることがある。時を経て、自分も歳を重ねると、当時観たときには気づかなかったことに気づいたり、汲み取れなかった意味が分かったりと、新たな発見がある。あと、10年経てば、忘れていることもありますよね(苦笑)。今回の自粛生活で、私自身もいくつか映画を観直したりしたのですが、やはり印象がまったく違ったりする。より深いことを感じるときがある。良い映画は、何度も観ることで理解が深まる。より味わい深く感じられるものなのではないでしょうか。お客様にとって、1度観た作品と再会して、新たな魅力を体感する場になってくれたらいいなと思っております。あと、この特集上映期間の座席は、縦は1列おき、横は1席を空けるようにして、見えづらい位置の席も空けて、220席のうち60席のみでの上映になります。もちろん安全面に最大限配慮してのことではあるのですが、長く休業していましたから、これぐらいの席数でお客様をお迎えするのが私どもとしても万全を期せるかなと。もちろん多くの方にご来場していただきたい気持ちはやまやまなのですが。そういう意味で、劇場再開のウォーミングアップのようなところもある。ですので、お客様にとっても、映画館に足を運ぶウォーミングアップになってくれたらいいかなと思っております」単なる知識ではない体験を得られる場。岩波ホールはそういう場でありたい前述のように、今回の<岩波ホールセレクション>、そして『シリアにて』の上映後は改装工事へ入る。「映写関係、天井、椅子などのメンテナンスです。見かけはあまり変わらないと思います。新しくなったと思っていらっしゃったら、“どこが違うの?”と逆に驚かれるかもしれません(苦笑)。もう古いので内装なども変えたほうがいいのかなと思いつつ、今の若い方は“レトロ”と言ってくれて喜んでくださったりする。この雰囲気がいいとおっしゃってくれる外国人の方もけっこういらっしゃる。これも私どもの劇場らしさであり、なくしてはいけないのかなと。まったく別の映画館に変化していることはないので、安心していらしてください」劇場の再開は来年2月。そこからがまた新たなスタートと言っていいのかもしれない。老舗ミニシアターとしてこれからをどう考えているのだろうか?「多くの方が当分は、密集することを避けたい気持ちを消すことはできないと思うんです。ですから通常に戻るにはかなり時間がかかることは覚悟しております。もう一方で、現在のような席数を限定して、ソーシャルディスタンスをとっての上映というのが、果たして、真のスクリーン体験、劇場体験、映画体験と言えるのかなと。やはり、多くのお客さんと場を共有しながら時間を過ごす。暗闇の中で、見ず知らずの人と観ることが真の映画体験ではないでしょうか。それがこのコロナ禍で、なくなってしまってはいけない。もちろん作品を楽しむことはDVDやVODでもできます。ただ、実感を伴うということに関しては、音楽にしても舞台にしても、ライブが長けている。映画を映画館で観るということも、変な言い方になりますが、“半ライブ”だと思うんです。演者や奏者は目の前にいませんけど、映画が代わりとなってくれて、体感としてこちらに伝わってくるものがある。そうやって身をもって実感したことは、自分でなにか物事を判断する際の素養を作るんです。情報として素通りしていかない。単なるデータで終わらない。自分の身に置き換えて考えたり、そのことに思いを馳せたりすることができる。そのように物事を感じたり、見たりすることができるのは、とても大切だと思うんです。単なる知識では得られない、体験できてこそ得られることがある。映画館もそういう場所のひとつではないか。岩波ホールはそういう場でありたいし、皆様が体感してなにかを得られるような作品を今も昔もこれからも届けていきたい。もちろん今回が再スタートではあるんですけど、岩波ホールとしては良い意味で変わらないといいますか。よく“愚直”と言われるんですけど、1本1本、映画を大切に届けることをこれからも続けていきたい。先々のことを考えても仕方がないので、そのとき、そのときでベストを尽くしていければいいかなと思っております」取材・文:水上賢治撮影:源賀津己岩波ホールセレクション第一弾ムヴィオラ配給上映終了『オレンジと太陽』6月20日(土)~6月26日(金)『パプーシャの黒い瞳』第二弾アルバトロス・フィルム配給6月27日(土)~7月3日(金)『残像』7月4日(土)~7月10日(金)『少女は自転車にのって』7月11日(土)~7月17日(金)『12か月の未来図』第三弾ザジフィルムズ配給7月18日(土)~8月7日(金)特集:アニエス・ヴァルダ監督第四弾アップリンク配給作品8月8日(土)~8月21日(金)上映作品調整中
2020年06月22日アップリンクが運営するオンラインの映画館「アップリンク・クラウド」にて、配給作品60本を、2,980円で楽しむことができる「アップリンク・クラウド配信キャンペーン」を実施中。本キャンペーンは、2,980円で、購入日から3ヶ月の間、60本の配給作品を楽しむことができる映画のサブスクリプション。シネマやレンタルショップへ外出せずとも、映画鑑賞ができる試みだ。主な配信作品は、『アカルイミライ』監督:黒沢清、 『わたしはロランス』 監督:グザヴィエ・ドラン、『ホドロフスキーのDUNE 』 監督:フランク・パヴィッチ、『氷上の王、ジョン・カリー』 監督:ジェイムス・エルスキン、『顔たち、ところどころ』 監督:アニエス・ヴァルダ、JR、『サーミの血』 監督:アマンダ・シェーネル、『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』 監督:スティーヴン・カンター、『エヴォリューション』 監督:ルシール・アザリロヴィック、『ラッキー』 監督:ジョン・キャロル・リンチ、『デヴィッド・リンチ:アートライフ』 監督:ジョン・グエン、リック・バーンズ、オリヴィア・ネールガード=ホルムなど。また、アップリンク・オンライン・マーケット()では、寄付込みの見放題プランもスタート。現在は、5,000円コース、10,000円コースの2つの寄付込みのプランがあり、どちらのコースにも3ヶ月見放題クーポンが2つ発行される。この他にも、映画ファン必見のオリジナルグッズや、安心して映画館へ足を運び映画を観ることができるようになった時に使える「ドリンクサービス付き回数券」「トートバック付き回数券」などの販売を企画中。不要不急の場合を除き、外出自粛が望まれる今は、おうちで映画タイムを楽しもう。《アップリンク・クラウド配信キャンペーンの詳細、申し込みは下記のリンクよりチェック! 》 URL:
2020年04月06日先ごろこの世を去った音楽家ミシェル・ルグランと、“ヌーヴェルバーグ”と呼ばれた映画作品、映画作家たちのコラボレーション作品を上映する特集「ミシェル・ルグランとヌーヴェルヴァーグの監督たち」が開催されている。ルグランは、1932年生まれのフランス人。指揮者の父と楽譜出版社を経営する母の下で育った彼は、幼いころから作曲を学びはじめ、ナディア・ブーランジェに作曲法を学んだ。その後は帝王マイルス・デイヴィスらを迎えたアルバム『ルグラン・ジャズ』で人気を博し、1954年には映画音楽の世界にも進出した。今回上映される作品以外にも『華麗なる賭け』『おもいでの夏』『栄光のル・マン』などの映画で名曲を次々に発表。彼は繰り返し自作曲をピアノ・トリオやソロ、オーケストラを用いて演奏し続けてきたが、映画のために書かれた楽曲もレパートリーの中心になっていた。今回はそんなルグランが音楽を手がけた7作品を上映。アニエス・ヴァルダ監督が作詞も手がけた劇中歌が印象的な『5時から7時までのクレオ』、“登場人物が歌わないミュージカルコメディ”として創作されたジャン=リュック・ゴダールの『女は女である』、ルグランが書いた8小節のメロディが響く『女と男のいる舗道』が上映される。さらにルグラン最大の、そして最良のコラボレーターとして多くの名作を残したジャック・ドゥミの作品は4本上映される。名曲『Chanson de Lola』を生み出したドゥミ=ルグランのコンビ初作品『ローラ』をはじめ、ルグランの代表作とも呼ばれる『シェルブールの雨傘』、のちに繰り返し自身が演奏することになるスタンダード『マクサンスの歌(Chanson de Maxence/You Must Believe In Spring)』を含む名曲連発のミュージカル『ロシュフォールの恋人たち』、そしてルグランの流麗なメロディと愛らしい劇中歌が作品を彩る『ロバと王女』が上映される。この時期のルグランと映画作家たちのコラボレーションは、単に“映画をつくる人と劇伴を提供する人”の関係ではなく、アイデアをぶつけ合い、時に共作者の関係になったり、時に嫉妬や複雑な感情が入り混じった関係になったりしながら、創作が行われた。その結果、今回の上映作品も“全編にわたってルグランメロディが流れまくる”作品もあれば、“彼のメロディは一部にしか流れていないのに、その存在感を強烈に感じる”作品もある。今回の7作品はいずれも名作な上に、ルグランと映画作家たちの火花の散るような駆け引きを感じられる作品ばかり。大きなスクリーンと大音響で心ゆくまで堪能したい。■ミシェル・ルグランとヌーヴェルヴァーグの監督たち・アニエス・ヴァルダ『5時から7時までのクレオ』・ジャン=リュック・ゴダール『女は女である』『女と男のいる舗道』・ジャック・ドゥミ『ローラ』『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』『ロバと王女』2月21日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次開催
2020年02月24日2019年1月26日に逝去したフランス音楽界の巨星ミシェル・ルグランの没後1年/生誕88年特別企画として、デジタル・リマスター版特集上映「ミシェル・ルグランとヌーヴェルヴァーグの監督たち」がYEBISU GARDEN CINEMAほかにて開催決定。その予告が解禁となった。ミシェル・ルグランは、2019年1月26日にその生涯に幕を下ろすまで、数多くのきらめく音楽を世に送り出し人々を魅了し続けてきた。今回の特別企画での特集上映では、“ヌーヴェルヴァーグ”を彼と共に盛り上げた3人の監督たちの作品を計7本上映。上映作品は、“まるで双子の兄弟のよう”と言われていたルグランとジャック・ドゥミ監督の初タッグ作である『ローラ』。ルグラン自身も出演しアニエス・ヴァルダが監督した『5時から7時までのクレオ』。また、2019年12月14日に逝去したアンナ・カリーナが主演し、ジャン=リュック・ゴダールが監督を務める多幸感あふれるミュージカル・コメディ『女は女である』と、日本初公開となる『女と男のいる舗道 4Kデジタル・リマスター版』が登場。そして華麗なるルグラン・サウンドが堪能できるミュージカル『ロシュフォールの恋人たち』、ドゥミ×ルグランの代表作にして最高傑作との呼び声高い『シェルブールの雨傘』、さらにはフーガの旋律が幻想的な世界を彩る『ロバと王女』も上映。この度、この7作品を彩ったルグランの珠玉のナンバーに合わせた予告が解禁となり、併せてルグランを敬愛してやまない音楽家の菊地成孔氏と世武裕子氏からコメントが到着している。音楽家・文筆家として活躍し、数多くの場面でミシェル・ルグランについて語ってきた菊地氏は「まだ終わったばかりの昨年は、ミッシェル・ルグランの逝去で年明け、アンナ・カリーナの逝去が掉尾を飾る、悲しく美しい、記念すべき年でした。ゴダールを、1967年からずっとひとりぼっちにさせていたルグランとカリーナは、とうとう本当に、ゴダールの孤独を実物にしてしまった。誰の代わりも原理的にはいませんが、ルグランの代わりこそは、本当に本当にいないでしょう(フランス音楽史上の損失を、一番小さく悲しむために)」と寄せた。また、映画音楽作曲家・ミュージシャンとして活躍し、最近でも『ロマンスドール』『風の電話』といった話題作の映画音楽を手掛けている世武氏は「ルグランの軽やかさはまるで魔法のようで、多くの音楽家が今なお、憧れるのだと思う。彼は、映画があってもなくても、変わらずピアノに向かって音楽を鳴らしていただろうけれど、映画は、ずっと彼に夢中だった。ルグランとは、そういう音楽家だと思う」とコメントした。さらに女性映画監督のパイオニアとして生涯現役を貫き、ルグランの死から約2か月後の2019年3月29日に90歳で息を引き取ったアニエス・ヴァルダは生前、『ロシュフォールの恋人たち』について下記のようにコメントを寄せている。「『ロシュフォールの恋人たち』はジャック・ドゥミの映画の中でも一番喜びにあふれ、ハッピーエンディングな映画です。彼の洗練された歌詞がミシェルに作曲のひらめきを与えたことが見られるのも嬉しいですし、同時に素晴らしい台詞は双子を演じた姉妹たちにも影響を与えました。なんて素敵な映画でしょう!」「ミシェル・ルグランとヌーヴェルヴァーグの監督たち」は2月21日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次開催。(text:cinemacafe.net)
2020年01月31日“Cinematic Attitude”をテーマに、今月末より開催されるアジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2019」(以下:SSFF & ASIA 2019)。この度、映画祭の各コンペティションの審査員が発表された。今回明らかになったのは、「CGアニメーション部門」、「地球を救え!部門 supported by リンレイ」、「ノンフィクション部門 supported by ヤフー株式会社」のコンペティション3部門の審査を務める審査員たち。国内外のコンテンツ業界に多数のクリエイターを輩出しているデジタルハリウッドと「SSFF & ASIA」とのコラボによる「CGアニメーション部門」では、「名探偵コナン」でお馴染み、TVプロデューサーの諏訪道彦、女優・とよた真帆、デジタルハリウッド大学学長の杉山知之が就任。ここでは、73か国747作品の応募から選定された12作品と、本年度米国アカデミー賞短編アニメーション部門ノミネート作品なども上映され、優秀賞は6月16日(日)のアワードセレモニーにて発表される。また、“映像の力で地球を救え”をコンセプトに、地球温暖化防止のための国民運動「チャレンジ25キャンペーン」との連携により2008年に設立され、現在は「地球を救え!部門」として生まれ変わったこの部門では、「ザ!鉄腕!DASH!!」でもお馴染みの加藤英明、モデル・冨永愛、元「THE BOOM」でシンガーソングライターの宮沢和史が審査。81か国626作品の応募の中から、9作品とジェレミー・アイアンズ主演作品を上映。優秀賞(環境大臣賞)およびJ-WAVEアワードを選定し、5月29日(水)に行われるオープニングセレモニーにて発表される。そして、昨年の20周年を記念し新設された「ノンフィクション部門 supported by ヤフー株式会社」では、『駆込み女と駆出し男』『日本のいちばん長い日』などを手掛けた映画監督原田眞人、タレントのホラン千秋、映画ライターの水上賢治が審査員に決定。82か国750作品と、昨年を大幅に超える応募数の中から、14作品とアニエス・ヴァルダ監督作品、本年度米国アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門ノミネート作品も特別上映。なお、翌年のアカデミー賞短編部門ノミネート候補となる優秀賞は、6月16日(日)のアワードセレモニーで発表される。「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2019」は5月29日(水)~6月16日(日)東京計5会場およびオンライン会場にて開催。※開催期間は各会場によって異なる(cinemacafe.net)
2019年05月09日5月14日から25日まで開催される第72回カンヌ国際映画祭のポスターが公開された。今年のポスターのビジュアルに起用されたのは、3月に亡くなった(享年90)「ヌーヴェル・ヴァーグの祖母」ことアニエス・ヴァルダ監督。デビュー作の『ラ・ポワント・クールト』を撮影している当時26歳のヴァルダ監督の写真なのだが、その撮影方法に度肝を抜かれる。ある男性の背中を台にしてその上に立ち、カメラをのぞき込んでいるのだ。「The Hollywood Reporter」によると、映画祭の主催者が、「この写真は、アニエス・ヴァルダという人物の情熱、冷静さ、無鉄砲さを総括していると言えるでしょう。彼女は自由なアーティストとしての材料を持ち、常に“レシピ”に改善を加えている人でした」と語っているという。ヴァルダ監督作はオフィシャル・セレクションに13回出品され、ヴァルダ監督は2005年、2013年と審査員も務めた。2015年には女性として初めて名誉パルムドール賞に輝くという快挙も遂げ、カンヌ国際映画祭とのかかわりが強かった。(Hiromi Kaku)
2019年04月16日ニューヨークで活躍する女性スケートクルーを題材にし、昨年のサンダンス映画祭ほか各国の映画賞で絶賛された映画『スケート・キッチン』の日本公開が5月10日(金)に決定。メインビジュアルと場面写真が到着した。本作は、「ミュウミュウ(Miu Miu)」が始めたプロジェクト「Miu Miu Women’s Tales」(女性たちの物語)の1本として、2016年に『That One Day』(原題)というタイトルで発表された短編が元。同プロジェクトの監督には女優のダコタ・ファニング、『あん』の河瀬直美、『顔たち、ところどころ』『冬の旅』のアニエス・ヴァルダなどが選ばれている中、ドキュメンタリー映画で評価を得ていたクリスタル・モーゼルが監督した『That One Day』が世界中で注目を浴びたことから長編化されることになった。N.Y.のスケートシーンを背景に、様々な人種的バックグラウンドをもつ少女たちが、男性社会に生きる女性の生き様と、仲間意識や自己発見の大切さを学び成長していく、彼女たちの“いま”を描いた青春映画。“スケート・キッチン”のメンバーたちが自ら主演しているほか、ウィル・スミスの息子で、ラッパーとして『スパイダーマン:スパイダーバース』のサウンドトラックにも参加しているジェイデン・スミスが主人公が想いを寄せる少年役で出演している。マンハッタンの“いま”を走り抜ける――新たなるスケボー映画が誕生ニューヨーク郊外に住む17歳の内気な女の子カミーユはスケートボードに熱中しているが、怪我が原因で母親からスケートを止めるように言われる。そんなある日、彼女は“スケート・キッチン”と呼ばれる女の子たちだけのスケートクルーと出会い、彼女たちの一員となる。母親との関係は悪化しつつも、どんどんスケートにのめり込んでいくカミーユは、謎のスケボー男子に恋をする。だが、この男子との関係は、スケボーのトリックを決めるよりも難しいことが分かり…。『スケート・キッチン』は5月10日(金)より渋谷シネクイントほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2019年03月28日「夜空と交差する森の映画祭2019」が、静岡県沼津市の“泊まれる公園”「INN THE PARK」にて、2019年9月21日(土)に開催される。「夜空と交差する森の映画祭」とは「夜空と交差する森の映画祭」は、長編やインディーズショートフィルムなど数十作品以上の映画を、野外フェス形式で夜通し上映するイベント。2017年は離島、2018年はサーキットと、これまでにもユニークな場所で開催されてきたが、2019年は静岡県沼津市の“泊まれる公園”「INN THE PARK」にて実施される。2019年は“泊まれる公園”「INN THE PARK」で同施設は少年自然の家をリノベーションした”大人の林間学校”がテーマの宿泊施設。代々木公園に匹敵する広大な敷地内には、イベントを行える「芝生公園」、森にひっそり浮かび上がる「球体テント」、緑を眺めることができる「サロンカフェ」などが設置されている。また、首都圏から高速で1時間半という好アクセスで、「夜空と交差する森の映画祭」史上最も都心からアクセスが良い開催地というのもポイントだ。『きみに読む物語』など全59作品を上映2019年は、合計59作品の上映が決定。会場内メインステージの注目は、ライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムスが主演を務める名作ラブストーリー『きみに読む物語』。また、宇宙を越えた父娘の愛を描くクリストファー・ノーラン監督作『インターステラー』、巨匠アニエス・ヴァルダとフランス人現代アーティストJRの交流を記録したドキュメンタリー映画『顔たち、ところどころ』、駆け落ちした12歳の男女の騒動を独特のユーモアとカラフルな色彩で描いたウェス・アンダーソン監督の『ムーンライズ・キングダム』、トム・クルーズ&ブラッド・ピットが出演する『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』を上映。さらに、長久充監督による『ウィーアーリトルゾンビーズ』、少年の瞳を通して“果てしない世界の謎”と“冒険”を描いた『ペンギン・ハイウェイ』などもラインナップする。4つのエリアを設置なお「夜空と交差する森の映画祭2019」では、2019年の世界観である「いつのまにか」をベースに、長編映画を上映するメインエリア「まちはずれのたからじま」、川を跨ぐ形でスクリーンを設置する「きいろいながぐつ」、森の映画祭史上初となる屋内エリア「ねえねえ みてみて!」、森の小道を抜けた先に現れるジャングルジムを囲んだ平野エリア「まっくらのなか」の4つのコンセプトエリアを設定。大きな芝生が広がる「まちはずれのたからじま」エリアでは、開場14時から18時までマーケットイベント「おひるすぎのピクニック」を開催。芝生に立ち並ぶ各店舗で、ショッピング、ワークショップ、フードやドリンクなどを楽しむことができる。さらに、影絵によるパフォーマンスや、映画メディアのシネマズPLUSによるトークショー、時間ごとに、映画監督やフィルマークススタッフなどにマスターが入れ替わる「スナックよぞら」などが開催される。「ねえねえ みてみて!」は、渋谷・吉祥寺でミニシアターを運営する映画配給会社アップリンクとタッグを組んで設置する。スープストック出店&一夜限りのレストランも会場には、食べるスープの専門店 「スープストックトーキョー」が出店。人気を誇る「オマール海老のビスク」のほか、数種類のスープを提供する予定だ。また即日完売した4月の第1回目の開催に続き、一夜限りのレストラン「月灯りの料理店」がオープン。当日は映画を鑑賞できる専用シートが用意され、「夜空と交差する森の映画祭2019」の世界観にあわせた料理と一緒に映画を楽しむことが可能だ。その他、「森の映画祭オリジナルクラフトビール」も2018年に引き続き登場する。当日上映タイムテーブル【詳細】「夜空と交差する森の映画祭2019」日時:2019年9月21日(土) オールナイト開催会場:静岡県沼津市 泊まれる公園「INN THE PARK」(静岡県沼津市足高220-4)上映作品:全59作品 『きみに読む物語』『インターステラー』『顔たち、ところどころ』『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』『ムーンライズキングダム』『ウィーアーリトルゾンビーズ』『ペンギン・ハイウェイ』などの長編映画や短編映画■チケット発売日:2019年8月1日(木)チケット購入サイト:・入場券(8/1~) 10,800円・新宿発バスツアー券 8,000円・名古屋発バスツアー券 12,000円
2019年03月28日© Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016今回取り上げるのは、芸術の秋にぜひおすすめしたいドキュメンタリー映画『顔たち、ところどころ』です。9月15日(土)から公開の本作は、年の差54歳の二人のアーティストが共同監督・出演したロードムービー形式の作品。アート好きや映画好きならずとも、多くの人が楽しめる映画になっています。 アニエス・ヴァルダとJR。二人のアーティストによるハートウォーミングなドキュメンタリー。 本作で、フランス国内を旅しながら、各地に暮らす人々とアート作品を作るのは、二人のアーティスト。ひとりは、“ヌーヴェルヴァーグの祖母”とも呼ばれる映画監督アニエス・ヴァルダ。『5時から7時までのクレオ』『幸福』などの作品を生み出した彼女は、女性映画監督の先駆ともいわれる存在。 © Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016 もうひとりは、写真家・アーティストのJR(ジェイアール)。彼は、大都市から紛争地帯、さまざまな場所で、そこに住む人々の大きなポートレートを貼り出す参加型のアートプロジェクトで知られています。 © Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016 同じ表現者として、互いの存在と作品を知りながらも、これまで会ったことがなかった二人。このドキュメンタリーは、そんな二人がフランスの田舎を旅しながら、旅先で出会う人々と交流し、作品を残していく様子を捉えています。二人が手掛けるアート作品は、フランス各地に暮らす人々の顔(ポートレート)を撮影した巨大写真を、建物や遺跡、廃墟などの壁に貼っていくというもの。JRの撮影スタジオ付きトラックに乗り込み、年の離れたチャーミングなアーティストコンビが旅を繰り広げます。 以下、ペルル読者に向けて、本作の見どころをピックアップしてご紹介! 54歳差のでこぼこコンビ。愛すべきキャラと、そのやりとりに注目。© Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016 まずは、祖母と孫ほど年の離れたアニエス・ヴァルダとJRのやりとり。アニエスは、年齢のせいで目が見えづらいのだと語ります。一方、JRはつねにサングラスと帽子を身に着け、素顔を見せようとしません。ぼんやりとした視界で世界を見つめる87歳(本作撮影時)のアニエスと、そんな彼女の“物の見え方”に、彼なりの軽やかで優しい態度で寄り添う33歳(本作撮影時)のJR。互いに刺激を与えながら作品を作る様子は、年齢もキャリアも越えた同志のよう。(二人がルーブル美術館を疾走するシーンは、一見の価値あり!)ひとりよがりではなく、尊重し合い共鳴する姿に、観ているこちらもワクワクしてしまいます。 フランス各地に暮らす、さまざまな人々との出会い。© Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016 もうひとつは、二人がフランス各地で出会う、市井の人々の姿。いわゆる“普通”の人々である彼ら、彼女らに話を聞くうちに、次々と鮮やかに浮かび上がるエピソードは、実体験に基づくその土地の歴史や記憶そのもの。一見すると“普通”に見えた人々の、思いがけないほどドラマチックな生き様が明らかになっていくのです。アニエスとJRは彼らの顔を撮影し、壁に貼り付けます。そうして、個人の心に秘められた物語が街の壁に大きく引き伸ばされ、掲示され、ときにはSNSで拡散され、市井の人々の人生に一瞬の光が当たる。この映画には、そんな感動的な瞬間がたくさん収められています。 © Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016 例えば、今では寂れた炭鉱労働者の村にひとりで住む女性。彼女はアニエスとJRを前にして、炭鉱夫だった父の思い出を話します。そして、壁に大きく貼られた父のポートレートを見て、かつてここで働いていた仲間たちも、昔のことを語り始めるのです。また、ル・アーブルの港街では、港湾労働者の仕事場を舞台に、そこで働く男たち……ではなく、(アニエスの提案で)その妻たちの全身のポートレートを、高く積み上げたコンテナの壁に貼り付けていきます。じつは、この港湾労働者たちはストライキの真っ最中。そんな状況にもかかわらず、自分たちもアート作品に参加したいと、二人のプロジェクトに喜んで協力するのです。アート作品という形でスポットライトを当てられた人々の姿を見ていると、“その人の働き方=(イコール)生き方”なのだと改めて認識させられます。そして、アーティストの立場として、彼ら、彼女らを一方的に撮影するのではなく、交流や対話を重ねながら作品を作るアニエスとJRの姿勢もまた魅力的です。 映画ファンがさらに楽しめるポイントも。そして、映画ファンやアートファンがより楽しめるポイントも。映画のラスト、アニエスはJRを喜ばせようと、映画監督ジャン=リュック・ゴダールの家を訪ねます。え?どういう感じでゴダールが登場するの!?という期待と、ちょっとした緊張感が漂うなか、ゴダールが出した返答も見どころのひとつ。ほかにも、JRが写真を撮影し、足場を組んだりクレーンに載ったりして、職人のようにして建物の壁にポートレートを貼り付けていく工程は、アートファンにとって、見ているだけで興味深い映像ではないでしょうか。 © Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016 この作品がすてきなのは、気取ったアートドキュメンタリーではなく、真摯で誠実で、たくさんの人々の笑顔や誇らしい表情があふれているところ。偶然の出会いを大切にしながらアートに取り組むアニエス・ヴァルダとJR。この映画で、二人はポティブな態度で人生と向き合い、さまざまな人々の生き方を肯定しているような気がします。二人のアーティストのことを初めて知るという人も、そんなにアートに興味がないという人も、明るい気持ちで笑って楽しめる作品です。ぜひ劇場でお楽しみください。 © Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016 ■『顔たち、ところどころ』(2017年/フランス)2018年、9月15日(土)より、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開脚本・監督・出演:アニエス・ヴァルダ、JR
2018年09月19日映画監督アニエス・ヴァルダと、写真家・アーティストのJRのドキュメンタリー映画『顔たち、ところどころ』が、2018年9月15日(土)より全国で順次公開される。ヌーヴェルヴァーグの祖母×新時代ストリートアートの先駆者年の差54歳、フランスの田舎街を巡る二人がアートを残す旅「ヌーヴェルヴァーグの祖母」とも呼ばれる女性映画監督の先駆けであり、2015年にはカンヌ国際映画祭で史上6人目となるパルム・ドール名誉賞を受賞した映画監督アニエス・ヴァルダと、大都市から紛争地帯まで、そこに住む人々の大きなポートレートを貼り出すアートプロジェクトで知られる写真家でアーティストのJR。本作は、そんな二人がフランスの田舎町を旅しながら、人々と作品を共に作り、そして街に残していくというロードムービースタイルのドキュメンタリー映画。第70回カンヌ国際映画祭にて最優秀ドキュメンタリー賞ルイユ・ドール、同年のトロント国際映画祭では最高賞にあたるピープルズ・チョイス・アワードのドキュメンタリー部門を受賞するなど、各国の映画祭を席巻した作品だ。旅の条件は、“計画しないこと”。プリンターも備えたJRのスタジオ付きトラックとともに、フランスの村々を巡り始める二人。そこにいたのは、炭鉱労働者の村に一人で住む女性、ヤギの角を切らずに飼育することを信条とする養牧者、港湾労働者の妻たち、100歳になるJRの祖母など、それぞれに様々なバックグラウンドを持つ人々だった。ルーブル美術館を訪れた際には、車椅子に乗るアニエスを押しながら館内を駆け巡り、ジャン=リュック・ゴダールが映画『はなればなれに』の作中で作った“最短見学記録”を更新。時に険悪になりながも、二人は様々な人々との心温まる交流を経験しながら旅を進めていく。作品情報映画『顔たち、ところどころ』公開日:2018年9月15日(土) シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国で順次公開監督・脚本・ナレーション:アニエス・ヴァルダ、JR出演:アニエス・ヴァルダ、JR音楽:マチュー・シェディッド(-M-)
2018年08月06日今年もアカデミー賞授賞式を目前に、ノミネートされた人々が集うランチパーティーが開催された。会場となった「ビバリー・ヒルトン」には、マーゴット・ロビー、ティモシー・シャラメ、スティーヴン・スピルバーグら170人以上の面々が集まったが、さまざまな理由で参加できない人も。長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた『Faces Places』(原題)のアニエス・ヴァルダもその1人だが、共同監督のJRのおかげで“間接的”な参加が実現した。JR監督がアニエスの写真を貼って切り抜いた、等身大サイズのダンボールを持参したのだ。毎年、このランチパーティーでは巨大なオスカー像を中心に出席者全員で集合写真を撮るのが恒例になっており、これが一大イベントでもある。もちろんダンボールのヴァルダ監督もJR監督の隣でしっかりと写真に収まった。ダンボール版ヴァルダ監督は会場で絶大な人気と注目を集め、ティモシーがうれしそうに一緒に写真を撮っている姿も目撃された。「Daily Press」紙によると約2メートルという長身の元NBA選手コービー・ブライアントの存在も、目を引いたようだ。集合写真の撮影後、参加者から「セルフィーを一緒に撮って」とのお願いが殺到したという。(Hiromi Kaku)
2018年02月06日映画『Faces Places(英題)』が2018年9月より順次全国公開される。『Faces Places(英題)』は、女性映画監督の先駆者アニエス・ヴァルダと、フランス人アーティスト・JR(ジェイアール)がフランスの田舎を旅しながら、村々に住む人々と接し、一緒に作品を作り残していくロードムービー形式の心温まるドキュメンタリー。アニエス・ヴァルダは、1955年の長編映画『ラ・ポワント・クールト(La Pointe Courte)』でデビューを果たして以来、女流監督としての地位を確立。その功績を讃えて「ヌーヴェル・バーグの祖母」とも呼ばれる。2015年にはカンヌ国際映画祭で、史上6人目となるパルム・ドール名誉賞も受賞した監督だ。JRは、一般人のポートレートを大きなポスターにして写っている人に返し、写真を好きな場所に貼ってもらう、という参加型アートプロジェクト『インサイド・アウト(Inside Out)』で知られるアーティストだ。公開された予告編でも、JRによるポートレートが街中を飾る様子が見られる。第90回米国アカデミー賞にもドキュメンタリー部門でノミネートされた『Faces Places(英題)』は、フランスのアカデミー賞と言われる第43回セザール賞のドキュメンタリー部門、作曲部門にもノミネート。既に第70回カンヌ国際映画祭にて最優秀ドキュメンタリー賞、ルイユ・ドール(金の眼賞)、2017年のトロント国際映画祭では最高賞にあたるピープルズ・チョイス・アワード(観客賞)のドキュメンタリー部門を受賞。世界中の映画祭で評価、注目を集めている。【詳細】映画『Faces Places(英題)』公開時期:2018年9月よりシネスイッチ銀座、アップリンク渋谷ほか全国順次公開監督:アニエス・ヴァルダ&JR出演:アニエス・ヴァルダ、JR©Agnès Varda-JR-Ciné-Tamaris, Social Animals 2016
2018年02月05日ファション・デザイナーとして知られるアニエスべーが、アニエス・トゥルブレという本名で初監督を務める『わたしの名前は…』。このほど、アニエスベー自身がセレクトしたチラシビジュアルが公開となった。舞台はフランス・ボルドー地方。主人公の12歳の少女は父親から虐待を受けていた。ある日、学校の遠足で出かけた海辺で偶然停まっていたトラックに乗り込んだ彼女は、スコットランド人のトラック運転手と共に逃避行に出る。フランス語と英語、言葉が通じない2人は、次第に心を通わせていくが…。世界的ファッション・デザイナーであるアニエスべーが、アニエス・トゥルブレという本名で初監監を務め、10年以上前に新聞で読んだとある事件の記事を元に、少女とトラック運転手の交流を瑞々しいタッチで描く本作。このほど公開となった4種類のチラシは、日本オリジナルのものも含めアニエスベー自身がセレクトしている。映画の中のキーワードともいえる赤いトラックの前で佇む主人公の少女セリーヌが印象的なビジュアルを始め、登場人物の2人が食事しているシーンや海辺でのカットなどが魅了的なビジュアル、フランスのアーティスト、ジュリアン・ランゲンドルフによる日本オリジナルのイラストと、自身が世界的デザイナーなだけあり、どれも美しいチラシに仕上がっている。「ほんとうのことは、誰にも秘密」という意味深キャッチコピーが添えられ、ストーリーへの想像力が喚起される本作。公開を心待ちにしたい。『わたしの名前は…』10月31日(土)より渋谷アップリンク、角川有楽町ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:わたしの名前は... 2015年10月31日より渋谷アップリンク、角川有楽町ほか全国にて公開(C) Love streams agnès b. Productions
2015年07月30日2014年、春夏コレクションはトレンドとは関係なく、アニエスbらしいパリの女の子が好きなナチュラルなスタイリング満載のコレクション。アニエスb好きな顧客が安心して次のシーズンもワードローブを揃えられる。このブランドらしいノスタルジックなフェミニンスタイルやバカンススタイル。パリらしい育ちの良さそうなお嬢さんスタイル。トレンドを意識したアフリカンイメージもアニエスらしい表現で。変わらない良さもあることを思い出させたコレクションでした。 >>2014年春夏パリコレ情報、続きはコチラ
2013年10月06日