2024年1月8日 12:00
『カラオケ行こ!』──中学生に歌を教わる綾野剛のヤクザが醸し出す、不思議な魅力【おとなの映画ガイド】
彫り方が下手なので、死ぬほど痛い。しかも絵心がない。それだけではない。問題は、絵柄。イカツイお兄さんの手の甲に、カワイイキャラを彫られてしまうのだ。これは死ぬよりつらい。だから何とか、歌唱力を上げ、回避したい!
そこで、目をつけたのが、たまたま市民会館でやっていた合唱コンクール予選で、これは、と思った中学合唱部。リーダーとおぼしき少年に先生になってもらおうと、つい声をかけたのが「カラオケ行こ!」。
舞台は、大阪近郊とおぼしき、のどかな町。
原作コミックではあまり細かく描かれていないが、カラオケに熱中するような、ややゆるめのヤクザが闊歩する「みなみ銀座」という古い歓楽エリアがでてくる。「町がなくなっていき、古いヤクザもいなくなっていく切なさや寂しさ、(脚本の)裏テーマの盛り込み方が上手いな、と思います。大阪のどこかにあるであろう、いわゆる“入っちゃいけない”と言われるような場所を探し求めましたね。本当に入っちゃいけないエリアでは撮影が難しいので(笑)、甲府の一角をそういった風に仕立てていきました。」と山下監督。
ヤクザ映画は、抗争や暴力事件を描くと硬派のアクション、市民社会と関わりを持つとコメディになる。