世武裕子インタビュー「表現者としてのクオリティがどんどん薄れていって、このままでは演奏家として危機感があった」
最後はカープが勝ってみんなが歓声をあげて拍手して、アナウンスが入って、ギリギリ選手の名前を言うまでを使うっていう、ある意味今回の中で一番大変な曲だったかもしれません(笑)。
――きっちりドキュメンタリーなんですね(笑)。
そうそう。でも、1カ所だけフィクションがあってMazda Zoom-Zoom スタジアム広島にいると、電車の警笛が入るんですよ。試合中に「ポーッ」ていう音が聴こえるんですけど、あれは時間的には試合の前半なんです。でもその音は曲の最後に入れてます。勝った試合の雰囲気を電車が夢に次に運んでくれるっていうイメージの方が、夢があっていいかなって、だからそこだけは時間軸に嘘をつきました。
――4曲目が椎名林檎さんの「ギブス」で、林檎さんの曲の中でもこの曲を選んだのはどうしてですか?
世武裕子「ギブス」
高校生くらいだったと思うんですけど、すごい人が出てきたなって衝撃があったんですよね、椎名さんの出現っていうのは。
だからやるんだったら椎名さんのキャリアの初期の頃の曲がいいなと考えている時、ふと雨の日にこの「ギブス」のアレンジを思いついたんです。いわゆるアーティスト・椎名林檎の物語とは違う、もっとずっと若い日の、とても繊細な女の子がそこにいる気がして。