石丸幹二「描かれているのは人ごとではないと気づいてもらえたら」―ミュージカル『パレード』再演への思い
僕らはご飯を食べたりしていますよ。でも森さんは、夜10時くらいの僕らが帰る時になって、やっとお弁当箱を開けて食べている……、そういう人なんです。エネルギーがあふれている演出家ですね。そこから出てくる指示は本当に的確で、研ぎ澄まされていて。この初演が森さんにとって初めてのミュージカル演出だったんですが、苦手なんて意識は乗り越えてやる! というすごいパワーが彼から感じられたので、僕らも彼のミュージカル初演出に対して、何ら不安はありませんでした。
ミュージカルだからこそ世に出た作品
――ミュージカルといっても本当に奥深いドラマが描かれているので、ストレートプレイを観るような感覚でもありました。
そうですね。でも僕は思ったんですけど、もしこれを音楽抜きでやったら相当に重い作品になる。
リンチの描写もありますからね。音楽というオブラートにくるんだことによってここまで表現できた、それもあの短い時間の中でね。ミュージカルだからこそ、世に出た舞台作品なんじゃないかな。確か、この事件が冤罪という判決が出たすぐ後に、ジャック・レモンで映像作品(編集部注:1988年のテレビミニシリーズ『七十年目の審判』)