『フェラーリ』マイケル・マン監督インタビュー。「人生は映画のようにシンプルではない」
すべての要素がまとまっていて、圧縮された街なんです。それにモデナの最大の特徴は墓地の多さでしょう。そこにはレースで亡くなったドライバーたちや戦争で亡くなった者たちの墓があり、50メートルごとに教会が建っている。モデナにいると死を感じずにはいられない。モデナは"死に囲まれた”街なのです」
本作でエンツォは、これまでのマイケル・マン映画のように銃撃戦を繰り広げたりはしない。彼はずっと昔にレーサーを引退した自動車メーカーの経営者だ。しかし、映画『フェラーリ』はマイケル・マン映画史上、最も濃厚に“死”を感じる。
「エンツォは身近な人間の死を経験し続ける人生だったと思います。
同じ年に父親を病気で、兄を戦争で失い、仲間や知り合いのドライバーたちも命を落とし、自分の息子も病で亡くなっています。だから彼は毎日、霊廟を訪れますし、劇中で名前の出てくるカンパーリとボルザキーニ(ジュゼッペ・カンパーリとバコーニン・ボルザキーニは、1933年にモンツァ・サーキットで開催されたグランプリ・ディ・ミラノで命を落とした)の墓もフェラーリ家の霊廟から歩いていける場所にあります。
エンツォは、モデナで死に囲まれながら生きてきました。