東京五輪に向けて「新テロ対策法案新設」へ…その概要と懸念点とは
と単純な準備行為のみで犯罪が成立するとすれば、実害発生なしに、共謀にかかわったとされる多数の人を処罰することが可能になってしまい、日本の法体系を破壊するものとの批判も寄せられています。
政府は国際組織犯罪防止条約の締結、批准のためにはテロ等組織犯罪準備罪の新設が必要不可欠と説明していますが、日弁連は、国際組織犯罪防止条約締結のためには犯罪の未遂に至る前の段階における処罰規定があれば足り、一定の重大犯罪について予備罪を設ける等の対応によるなど、共謀罪を新設する必要まではないと指摘しています。
また、諸外国との協議内容の重要な部分が公開されておらず、共謀罪を新設しなくても足りるとする従前の日本提案が受け入れられなかったという説明の真偽を検証できないことも併せて指摘しています。
2020年の東京オリンピックの開催に向けてテロ対策を整えるという目的は正当なものかもしれませんが、テロ等組織犯罪準備罪の新設、対象犯罪については、さらに慎重な議論が必要不可欠だといえましょう。
*著者:弁護士 木川雅博 (企業法務(会社運営上生じる諸問題)、売買代金・貸金請求、損害賠償・慰謝料請求、不動産を巡る法律問題、子どもの事故、離婚・男女間のトラブル、相続問題,破産・民事再生・債務整理、労働問題など、法人・個人を問わず様々な案件を扱っています。