「不倫相手に全財産を相続する」…こんな遺言は許されるの?
(大達弁護士)
■家族は1円ももらえないの?
もしも、「全財産を不倫相手に」という遺言が有効になった場合、配偶者や家族は何も相続できないのでしょうか?
「相続人に対しては“遺留分”と呼ばれる最低限度の相続財産が保障されています(民法1028条)。被相続人の財産によって生活していた者の生活を保障することを目的として規定されたものです。
被相続人の親など尊属のみが相続人である場合には、被相続人の財産の3分の1が、それ以外の場合には、被相続人の財産の2分の1が相続人全体の遺留分となります。そして、その遺留分は、相続人の間で相続割合に応じて各相続人に生じます。
例えば、『妻+子3人』の相続人がいる中で不倫相手の全財産相続の遺言が有効になった場合、相続人全体の遺留分である全財産の2分の1を法定相続分に応じて分けることになります。
妻の遺留分は、2分の1(遺留分)×2分の1(法定相続分)として相続財産の4分の1。子1人の遺留分は、2分の1(遺留分)×2分の1(法定相続分)×3分の1(子の人数)として相続財産の12分の1となります。
もし、この遺留分を侵害された場合は、遺産を受け取った者に対して遺留分減殺請求をすることができます(民法1031条)。