くらし情報『【ジェーン・オースティン生誕250周年】ジェーン・オースティン 著 パーカー敬子 訳『理性と感性』第一巻 第一章特別公開』

【ジェーン・オースティン生誕250周年】ジェーン・オースティン 著 パーカー敬子 訳『理性と感性』第一巻 第一章特別公開

しかし妻のファニーは夫を風刺したような人で、夫以上に狭量で利己的だった。
ジョン・ダッシュウッドは父に約束した時、異母妹達にそれぞれ一千ポンドを贈与しようと考えた。その時はそれができると自分でも本当に思っていた。今までの収入に加えて、ノーランドからは年収四千ポンド(土地貸借料、農民の家賃、自家農場の農作物売上金など)が上がる見込みだし、母親の遺産の分け前もある。そのため心が温まり気前良くできると思ったのだ。―「そうだ、三千ポンドを贈与しよう。気前良いことだし、大した額だ!あの一家は完全に楽になる。三千ポンドだぞ!こんな多額を分けてやっても別に不便ではない」。
―彼はこの件をその日一日考え、その後何日も考え、後悔しなかった。
ヘンリー・ダッシュウッド氏の葬儀が済むや否や、義理の娘ファニー・ダッシュウッドが、義母に前もって知らせもせずに子供と乳母を連れてノーランドに乗り込んで来た。彼女にその権利があることには誰も異議を唱えられない。邸宅は義父の死の瞬間から夫ジョンのものである。しかし彼女の思いやりに欠けたやり方はただでさえ気に障るのに、義母ダッシュウッド夫人の立場から言えば非常に不愉快だった。
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