32歳で完全に視力を失い…難病を患っても医師になった理由「限定的な視野に縛られていた」
医学部に入ったことでいつのまにか「医師以外の可能性」が見えなくなっていたのでしょう。皮肉なことに、目が悪くなったことで、医師以外の無数の可能性の扉が目の前に現れたようにも思えたのです。
そんなわけでそこからの1年間は、国家試験再挑戦を目指す予備校生をしつつ、とにかく色々な扉をノックしながら人生を探す時間となりました。
会いたかった人に会いに行く。
音楽仲間と野外ライブをやってみる。
大好きな番組にネタを投稿してみる。
小説を書いてコンテストに応募してみる。
インターネットラジオ局でDJをしてみる。
医学部を飛び出して見た世界は、実に色とりどりでした。そしてこれまでの生き方では出会えなかったたくさんの人たちに出会いました。アマチュアの音楽イベントに出ている人の中には、平日は会社員、休日はミュージシャンという2つの顔を持つ人がいました。また、侍の恰好で刀を振り回しながら歌うあの人も、歌い終えると優しい笑顔で子どもと遊ぶ、お父さんであることが分かりました。
生き方は十人十色。そして1人の人間の中にも多様な生き方が内在している。新たに訪れた世界でそう実感した私は、これまでいかに自分が限定的な視野に縛られていたかということに気づかされました。