年の差54歳!『顔たち、ところどころ』は、チャーミングなアーティストコンビが贈る愛しいドキュメンタリー。
アニエスは、年齢のせいで目が見えづらいのだと語ります。一方、JRはつねにサングラスと帽子を身に着け、素顔を見せようとしません。ぼんやりとした視界で世界を見つめる87歳(本作撮影時)のアニエスと、そんな彼女の“物の見え方”に、彼なりの軽やかで優しい態度で寄り添う33歳(本作撮影時)のJR。互いに刺激を与えながら作品を作る様子は、年齢もキャリアも越えた同志のよう。(二人がルーブル美術館を疾走するシーンは、一見の価値あり!)ひとりよがりではなく、尊重し合い共鳴する姿に、観ているこちらもワクワクしてしまいます。
フランス各地に暮らす、さまざまな人々との出会い。
© Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016
もうひとつは、二人がフランス各地で出会う、市井の人々の姿。いわゆる“普通”の人々である彼ら、彼女らに話を聞くうちに、次々と鮮やかに浮かび上がるエピソードは、実体験に基づくその土地の歴史や記憶そのもの。
一見すると“普通”に見えた人々の、思いがけないほどドラマチックな生き様が明らかになっていくのです。