先生のように細くないし似てないしムリですよ! と。でも先生を演じるのではなく『楳図かずおという漫画家を演じてほしい』と言われ、それならと出演させていただいたんです」。
数々の著作同様に本作もまた「恐怖」を描いている。「お化け屋敷がそうだけど、単に脅かすだけなら簡単。角を曲がった所にいたり、トイレで下からのぞいていたり、ありえない状況でやにわに何かが出てくれば怖いんです。でもそればかりじゃ質が低い。より人間性を追及したところを根拠にして生まれるものこそ本当に怖いんだと今回、実感しました」と楳図は本作の怖さに手応えを口にする。
愛之助も歌舞伎でいくつもの怪談物に出演してきたが、楳図作品の独特の怖さをこう表現する。
「どこまで本当なのか? (役の)楳図かずおの経歴、ご両親の遺影代わりにお皿を飾っているのも本当の話なんです。では何が嘘なのか? 分からないままに僕らは弄ばれているんです(笑)」。一度見たら忘れられないあの画風とはまた異なる映像による表現の中に、しかし「楳図ワールド」はしっかりと継承されている。『マザー』
9月27日(土)より新宿ピカデリーほか全国にて公開
取材・文・写真:黒豆直樹
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