と充実した表情で振り返る。
会ってすぐに意気投合し、俳優として共鳴した。2人の友情を描く感動シーンは数多くあるが、伊勢谷がユとの競演の楽しさを強く感じたのは、何気ない会話を交わす車でのシーン。「激しく怒って、それを受けて…というような感情のやりとりがない、どこに向かうでもない会話ですが、それがすごく快適だったんです。それは実はすごく難しいこと」と言えば、ユも「演技は一人でするものではない。思いを通わせたからこそ生まれた自然なハーモニーでした」と我が意を得たりとばかり頷く。
日韓関係が難しい局面を迎えているいまだからこそ本作が公開されることに意義を感じている。伊勢谷が嬉しそうに言う。
「僕が『もしも両国が銃を向け合うようなことになったら、僕は日本の銃の前に立ちます』と言ったら、彼はすぐに『自分も同じ。韓国の銃の前に立ちますよ』と言ってくれた。それは撮影中のどんなことより感動した」。ユも伊勢谷の言葉を受けて続ける。「映画を作る上で、壁を作って孤立することは避けなくてはいけない。これからもこうした合作が行われることを望むし、僕も積極的に参加していきたいです」。
取材・文・写真:黒豆直樹
『ザ・テノール真実の物語』
10月11日(土)新宿ピカデリー、東劇ほか全国ロードショー
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