その結果、映画全体もスリルたっぷりになっているが、奥にあるのは、人間の心理についての物語なのだ。
スーザンがアート業界の仕事をしているという設定のため、映画の冒頭のほうではユニークで目を引く映像が登場するが、『シングルマン』もそうだったように、ファッションデザイナーが作る映画にしては、ビジュアルへのこだわりをうるさく前面に押し出してはこない。アートなんて実はどうでもいいものだ、などという、やや自虐的なせりふなどに、さりげないユーモアも見られる。ほかと違い、さらに自分の1作目とも違う新作を生み出してみせたフォードの、今後の映画監督としてのキャリアが、ますます楽しみになった。
取材・文・写真:猿渡由紀
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