くらし情報『三者三様の心の機微に触れ、決断を見守る。『チルドレン』稽古場レポート』

三者三様の心の機微に触れ、決断を見守る。『チルドレン』稽古場レポート

過去の責任をどう取り、未来にどのようなものを残すのか。次の世代のために、今の世代には何ができるのか。ナチュラルな日常会話を通して、普遍的な命題が、強く痛切に訴えかけられていく。

高畑はヘイゼルの表向きの強さと裏腹の脆さを体現。鶴見のロビンには女性たちに愛される男の魅力と悲哀が滲む。若村は陰影のある演技でローズの孤独や決意を表していく。3人が紡ぎ出す心の機微は、細やかで豊かだ。酸いも甘いも噛み分けた彼ら大人が、旧知の人間を相手に、ある瞬間には、子供のようにムキになり、狼狽し、生への執着をむき出しにする。
3人揃っている時とひとり欠けてふたりになった時で雰囲気が変わるのも、リアルで面白い。そして、何気ない会話から、各自が隠し、あるいは封印して自分でも忘れかけていた優越感や劣等感、罪悪感などが浮かび上がる。人は誰しも、傍から見る以上に繊細で入り組んでいるのだ。

三者三様の立場や思いに私達はうなずき、彼らの会話に共感を覚えながら、大きな決断に至るまでを見守ることになる。その一挙手一投足、言葉ひとつ表情ひとつたりとも見逃せない。台詞劇の醍醐味にあふれた作品の開幕は間もなくだ。

公演は9月8日(土)埼玉・彩の国さいたま芸術劇場大ホールより。その後、 全国を周る。


取材・文:高橋彩子
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