不幸よ、どこへ。三島由没後50周年企画「真夏の死」
彼が舞台作品を手がけるときには、いつも使っている現代口語のセリフ文体へ。中村ゆりと平原テツが演じる令和の若い夫婦は、自分たちを襲った不幸について、心の内を露わにしながら延々と語り続ける。客席に対峙するふたりの告白を、息を詰めて見届ける舞台と言おうか。
「コロナを経験しても、やれることをやろうという、自分の創作のスタンスは変わっていないつもり。ただ、感染拡大とともに、人間の命の価値や死の痛みが、感染者や重傷者や死亡者の数字に置き換わってしまったことへの違和感は、この作品にも共通しています。不幸な海難事故をめぐって、主人公夫婦の悲しみの体験と、彼らを取り巻く周囲の人たちとの関わりの間には、隔たりがある。その無意識な周囲の在り方は、コロナの今にもあるものです」。
なお、「真夏の死」は、熊林弘高演出の「班女」とともに2作品続けて上演される。
オンライン配信、アーカイブ配信もあるので、そちらもぜひチェックしてみてほしい。取材・文:戸塚成