『ルソー、フジタ、写真家アジェのパリ ー 境界線への視線』から垣間見える新しい "パリ" の見え方
前回の企画展「Modern Beauty展」も大盛況のうちに終了した箱根ポーラ美術館。2016年度後半の企画展は、19世紀後半〜20世紀のパリが舞台。「ルソー、フジタ、写真家アジェのパリ − 境界線への視線」と題した本展覧会では、ルソー、フジタ、アジェの3人の芸術家を中心に取り上げています。彼らを「パリ」と「境界線」という共通点を紐解いてみましょう。「時代の大きな変化」に芸術家として生きていた彼らの作品は、現代を生き抜くヒントになるかもしれません。
◆見どころ1芸術家が捉えつづけたパリ市周辺部の「境界線」19世紀中期から20世紀初頭にかけ、パリ市は周囲を壁に取り囲まれていたそう。その間、パリ市の人口増加に伴い貧富の差も拡大。煌びやかな中心部とは異なり貧困層が住むパリ市周辺部で作品を作り続けた人物が、今回の3人です。日曜画家として活動していたアンリ・ルソー、渡仏し戦前すっかり画会を代表する日本人と名声を手に入れたレオナール・フジタこと藤田嗣治、そして写真家として大器晩成となったウジェーヌ・アジェ。同じパリ市周辺部の「境界線」を題材にしていたにも関わらず、彼らの作品は三者三様でした。殊に、日本から渡仏したフジタにとっては日本人であるという来訪者としての自意識と、貧困者という街にとっての異物とを、重ね合わせていたと言われています。