「仁」が変えるパリの寿司。北海道からフランスへ、地産地消で挑む食文化の継承
地産地消で異国の文化を伝える渡邉さんが渡仏した当時パリで根付いていた寿司はロスやNYで見たロール寿司とは違い、意外と日本らしくやっているなという印象だったという。しかし、獲れる魚の違いから、こちらの握りの主流はサーモンやカニ、本マグロではなくバチマグロなどだった。彼にとってそれは決してマイナス要素ではない。北海道で店を構えていた時から料理のコンセプトには「地産地消」を掲げている。フランスにいるならば日本の食材を使っては意味がない、と仁ではフランス近郊で獲れる食材をメインに使用。魚が育つ海水自体にコクがあり身の味がしっかりしているので日本とは味も食感も異なるのだそう。パリの食通を唸らせる寿司は、しっかりと現地の食材を尊重して握られている。そうすることで唯一無二の味わいになるのだ。
一つ問題があるとすれば、それは魚に対する認識の違いにあった。「魚を下ごしらえするという文化がフランスでは浸透しておらず、切ってそのまま出してしまう寿司店もありました。例えば身がダメにならないように塩を当てたり、酢でしめたり、漬けにしたり、寿司を握るには食材によって様々な技法が用いられています。そうした下ごしらえや細かな調理方法を含めて寿司という食文化なので、まずはパリで魚の扱い方や認識を変えていきたいです。」